新型コロナで特需と逆風、半導体メモリー「DRAMとNAND」の市況はなぜ違う?
パソコンなどのデータの一時記憶に使うDRAMの価格は、足元で調整局面に入ったようだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で世界的に増えた在宅勤務や遠隔授業は、ノートパソコンやタブレット端末の特需を生み出した。その一方で、外出自粛などで消費自体が鈍り、主要用途のスマートフォン販売が落ち込んでいるもよう。
中国や欧米で経済活動再開の動きが出ているものの、ワクチン開発には時間がかかる見通し。新型コロナ収束後の生活スタイル次第では、英調査会社のオムディアが示す市場予測のような回復基調が後ろ倒しになる可能性はある。新型コロナ以外の懸念材料として、米中貿易摩擦の問題は変わらない。米国が15日、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に対する半導体などの禁輸措置を強化すると発表した。ファーウェイに製品を供給する半導体メモリーメーカーなどは深刻な影響を受ける恐れがあり、今後の動向を注視している。
【動画配信急拡大】
一方で、同じ半導体メモリーでデータ保存に使うNAND型フラッシュメモリーは状況が少し異なる。スマートフォン向けの需要が冷え込むのは同じだが、外出自粛による動画配信サービス利用の急拡大を追い風にしてデータセンター向けが堅調に推移する見込み。在宅勤務用パソコン向けの需要も市況を下支えする。
NAND型フラッシュメモリー世界大手のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)は主力の四日市工場(三重県四日市市)を中心にフル稼働が続く。
【黒字に転換】
14日に発表した2020年1―3月期連結決算は売上高が19年10―12月期比9・9%増の2796億円、営業利益が同326億円改善の121億円の黒字に転換した。新型コロナの逆風が吹き始めていた中での黒字化は需要の底堅さを証明する。
半導体メモリー市況は新型コロナと米中貿易摩擦の2大問題に直面するが、その影響にも濃淡がありそうだ。