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日本の企業文化が「ジョブ型雇用」の浸透を妨げる?

エンワールド・ジャパンが意識調査を実施

日本最大級のグローバル人材に特化した人材紹介会社エンワールド・ジャパン株式会社(東京都中央区、ヴィジェイ・ディオール社長)は「ジョブ型雇用」に関する意識調査を行い、274社から回答を得た。

「ジョブ型雇用」とは、職務内容、勤務地を明確に定義し、定めた範囲の仕事において成果で評価する雇用制度である。今回の調査では、参加した企業のうちの外資系企業の7割以上が「ジョブ型雇用」は企業にとってメリットがあると回答した。

「「ジョブ型雇用」は企業にとってメリットがあると思いますか」に対する企業の回答

ジョブ型雇用のメリットについては、「専門的なスキル・知識のある即戦力人材を採用できる」「成果にコミットしてもらいやすい」といったメリットが挙げられたが、「適性がないと判断したときに異動ができない」「事前に業務の範囲を定義するのが難しい」というようなデメリットを指摘する声も出た。

メリットとデメリットはそれぞれ、外資系企業と日系企業から多く上がった。これはすでにジョブ型雇用が主流となっている外資系企業と、メンバーシップ型雇用を主流としてきた日系企業の文化の違いが現れた結果であると言える。

また、ジョブ型雇用で採用はしやすくなるかという問いに対して「採用しやすくなる」と回答した企業は、全体の46%と半数には届かなかった。

「「ジョブ型雇用」で採用はしやすくなると思いますか。」に対する企業の回答

「採用ターゲットがより明確になる」「育成の擦り合わせが行いやすい」という声もある一方で、「条件を満たす候補者が少ない場合は採用に時間がかかる」「採用難易度の高い職種において変わらない」など、問題点を指摘する意見も多く上がったことが今回の結果の要因である。

そしてコスト面においても、「より条件のよい企業へ人材が流れていくため」「ポテンシャルよりも具体的に専門性の高い人材を求めることとなる」といった理由から、ジョブ型雇用は採用コストが高くなると考える企業も多数存在することが調査から示された。日本でもジョブ型雇用の導入は加速しているが、定着させるには解決しなくてはならない課題が山積しているようだ。

〈調査結果解説〉 エンワールド・ジャパン  ヴィジェイ・ディオール社長

日本企業は伝統的に、新卒社員を採用し、様々な部署を経験させてキャリア形成を行う「メンバーシップ型雇用」を主流としていましたが、近年では欧米企業同様、より専門性の高い人材を雇用する「ジョブ型雇用」が増加しています。この傾向は、テクノロジーの進化とビジネスの高度化が進むにつれて、ますます加速していくでしょう。

専門性の高い人材の需要が高くなる一方、仕事の範囲が限定され柔軟性が低くなるため、採用と雇用維持のためのコストが高くなる可能性は、外資系企業・日系企業に関わらず全ての企業が直面する課題になると予測されます。今後、ビジネスの進化や、グローバル化が進むにつれて、企業がこの課題をどのように解決していくのか、また、外資系企業と日系企業の異なる雇用慣行の中で、ジョブ型雇用の足並みが揃うのか、あるいは異なる形で発展していくのか、非常に興味深い変化となることでしょう。

エンワールド・ジャパン ヴィジェイ・ディオール社長

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