日立の大型買収、成否の裏にグローバル人事制度あり

新型コロナでジョブ型さらに加速

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日立の東原敏昭社長

企業での「働き方」が、変革の時代を迎えている。グローバル化の進展や人口減少で働き方改革を迫られていたところに、新型コロナウイルスの感染拡大が加わり、従来の働き方そのものを大きく揺さぶる。デジタル技術の浸透と相まって、日本企業のあり方が、働き方から大きな変貌を遂げようとしている。

問われる戦略

日立製作所の人事戦略の節目に大型買収あり―。7月、スイス・ABBから送配電事業を過去最大の約7500億円で取得した。時計の針を戻すと、日立は2002年末に米IBMからハードディスク駆動装置(HDD)事業を当時の最高額で買収したが、この時も人事戦略が問われた。

「この時の反省が強く残っている」と、最高人事責任者(CHRO)の中畑英信専務は述懐する。当時の日立は世界共通の人事制度を持たず、国ごとにバラバラ。「旧IBMの人たちから日立の人事戦略を聞かれて、我々は答えられなかった」と明かす。

結果として買収新会社の日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)はIBM時代の人事制度をそのまま使うことにした。中畑専務は「人事施策は会社の根幹であり、買収された側も失望したのではないか」とグローバル化前の未熟さを恥ずかしがる。

05年から日立GSTに最高経営責任者(CEO)として乗り込んだ中西宏明会長は最前線でもっとも悔しい思いをした人物だ。世界共通人事制度の必要性を東京本社へ進言するも、00年代は構造改革に明け暮れて財務体質も悪化しリーマン・ショックで巨額赤字に転落した“冬の時代”。人事戦略の優先順位は高くなかった。

世界共通制度

その中西会長は10年に日立製作所の社長に就任。11年から念願だった世界共通人事制度の構築へ動きだし、現在全社挙げて進めている、職務内容を明確に規定するジョブ型雇用への転換が一つの集大成となる。

東原敏昭社長は、ABB送配電事業の巨額買収を「黒船来航」と例える。ABBの人事制度も当然ジョブ型。「私が意図して呼び込んだ黒船だ。日立を真のグローバル企業にするため、変革のドライビング・フォースにしていきたい」と“外圧”を最大限活用する。

ジョブ型雇用に不可欠なジョブ・ディスクリプション(職務定義書)の作成も、ABBから事業を受け入れたエネルギー部門などが先行。21年春までに本体従業員3万人強対象に導入を終える。

改革へ追い風

ただ、職名やグレード(等級)、リポート先、役割・責任、スキル・経験を規定するジョブ・ディスクリプションはあくまで働き方改革の道具に過ぎない。「新型コロナウイルス感染拡大により、各人の役割が明確になっていないと(在宅勤務時に)仕事がやりにくいと皆分かった」(中畑専務)と、コロナ禍が改革への想定外の追い風となっている。日立は21年4月以降も社員の在宅勤務率5割を目指すことを決めた。

密な個別面談や管理職研修などで社員の意識を変えながら、当初は24年度までにジョブ型への転換を完了する計画だった。「新型コロナで社員の意識改革が想定以上に進み、24年度より早まりそう。大きなチャンスだ」と中畑専務はコロナ禍を逆手にとって名実ともにグローバル企業への変革を急ぐ。


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