普及する「踏み間違い防止装置」、後付けでは技術・価格で限界がある?
自動車メーカーが、社会問題化する高齢運転者の交通事故低減につなげようと、後付けできる「ペダル踏み間違い加速抑制装置」を相次いで市場投入した。既販車の事故を防ぐ狙いがある。ただ、あらゆる交通事故をカバーする全方位の対策ができるわけではない。後付け装置の技術開発は続くが、実現不可能な領域も意識しなければならない。(松崎裕、名古屋・政年佐貴恵)
各メーカーは走行中の衝突被害を軽減する自動ブレーキや、ペダル踏み間違い加速抑制機能などを新車に標準装備する。現在、新車の約8割にこうした先進安全技術が搭載され普及が進む。
一方、国内に8000万台以上とされる既販車の対策が課題となっており、9月始めまでに国内乗用車メーカー8社すべてがペダル踏み間違い加速抑制装置の販売を始めた。
日産自動車やスズキ、マツダなどが採用した装置は、デンソーのシステムが基盤。デンソーはトヨタ自動車と同装置を2018年に共同開発した。センサーで前後方の約3メートル以内にある障害物を検知して警告を出し、それでもアクセルを踏み込んだ場合に加速を抑制する機能などを備える。
7月にはトヨタが第2世代となる後付け装置を発売した。特徴は障害物がなくてもシステムが作動する点だ。十数万台分の過去の踏み間違い事故発生時のアクセルペダルの踏まれ方のデータなどを分析し、障害物が無くても異常なアクセル操作を特定できるようにした。
現在、センサーを搭載した車両が増えており、取得できる車両データは増えている。得られたビッグデータ(大量データ)を活用すれば、トヨタが装置を第2世代へと進化させたようにシステムをさらに高度化できる可能性はある。
ただ後付け安全装置で実現できる機能は技術や価格面で課題があるというのが業界関係者の共通の声だ。例えば、走行中に作動する自動ブレーキ。ブレーキを制御するためにはセンサーでの検知、電子制御など複雑で高度な機能追加が必要となり、「大幅な車両改造が必要になる。価格などの面でお客さまに大きな負担がかかってしまう」(自動車メーカー広報)とみられ、実用化は容易ではない。
後付け装置を活用した既販車の安全対策には限界がある。今後、自動ブレーキなどの安全装置を備えた中古車が市場に出回ってくる。産官でそうした中古車への買い替え促進策を強化するなどし、安全装置のない既販車を減らしていく取り組みも引き続き重要になりそうだ。