トヨタが突き詰める、踏み間違い事故撲滅への道

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急アクセル時加速抑制機能を搭載したプリウス

トヨタ自動車が、アクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故の撲滅に向けた動きを加速している。ビッグデータ(大量データ)を活用して異常なアクセル操作を特定し、周囲に障害物のない状態で作動する新システムを開発。第1弾としてこのほど発売したハイブリッド車(HV)「プリウス」シリーズに搭載した。高齢ドライバーの交通事故が増加傾向にあるなか、安全技術の一層の高度化に取り組んでいる。(取材=名古屋編集委員・長塚嵩寛)

「比較的ご高齢のお客さまが多く、年間ベストセラーカーだからこそ、安全面でお役に立てる電動車を目指した」。田中義和ミッドサイズビークルカンパニーMS製品企画ZFチーフエンジニアは、新機能「プラスサポート」の初搭載車にプリウスを選んだ理由をこう話す。

内閣府の2017年交通安全白書によると、75歳以上が第1当事者となったペダル踏み間違いによる死亡事故発生率は、75歳未満を1とした場合、8倍に上る。歩行者を巻き込む悲惨な事故となるケースが多く、事故防止が喫緊の課題だった。

トヨタは12年に、超音波センサーで静止物を検知して衝突被害の軽減に寄与する「インテリジェントクリアランスソナー(ICS)」を製品化した。足元で国内向け新車への装着率は約85%に上っている。

18年12月には既販車向けの後付け装置も販売し、対応車種は20年5月時点で12車種となった。ICSの導入効果は大きく「約7割の踏み間違い事故を減らせた」(田中チーフエンジニア)という。

ただ、ICSは障害物がある場合にのみ作動し、障害物がない場合の対策が急がれていた。新機能はセンサーではなく、過去の走行データをもとに構築したアルゴリズムで踏み間違いを判断するのが特徴。十数万台分に及ぶドライバーの急加速行動をビッグデータから抽出・解析した。ICSで防げない事故をカバーする技術として期待できる。

データを急加速時のアクセルの踏み具合やウインカー操作など直前の運転行動と照らし合わせることで、急加速が必要な状況か、踏み間違いかを判別できるようにした。システムが作動すれば、アクセルを強く踏み込んでも低速のクリープ走行で加速を抑制する。

まずは一部改良したプリウスとプラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」にオプション搭載したほか、既販車のプリウスには後付け装置を用意した。対応車種を順次拡大し、「将来は全車種への導入を目指す」(同)。

豊田章男社長はかねて「交通死傷者ゼロの社会を作るのが我々の使命」と話してきた。トヨタは今回開発した新機能の考え方を他の完成車メーカーと共有し、業界全体で交通事故ゼロを目指す考え。安心・安全を突き詰めるクルマ開発に終わりはない。

日刊工業新聞2020年7月6日

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