鉄筋露出や漏水をAIで検知!キヤノンがインフラ点検サービスを拡充する狙い
キヤノンは、人工知能(AI)を活用したインフラ構造物点検サービス「インスペクション アイforインフラ」の機能を拡充する。ひび割れ以外にも、鉄筋の露出や漏水などの変状も検知可能にする。年内に提供を始める予定。部材の劣化を判定するAIの開発も進めており、インフラの点検・管理でのAI活用拡大を図る。
インフラ構造物点検サービスは、橋やトンネルなどの画像をAIが解析して変状を検出する。AIは東設土木コンサルタント(東京都文京区)と共同開発した。近接目視と比べて効率的に多くのひび割れを発見でき、作業員の負担も少ない。
新たに鉄筋の露出や漏水、コンクリート中の物質がコンクリート内部に浸入した水分などと反応して発生するエフロレッセンス(白華)などもAIで検知可能になる。これらの変状は構造物ごとに現れ方や見え方が異なるが、点検対象ごとに分析モデルを作成することで自動検知を実現。鋼材の錆、道路のアスファルト舗装の剥離による穴(ポットホール)など、コンクリートの変状以外も検知できる場合がある。費用や開発期間は個別見積もり。
キヤノンによると点検で見つかる変状の大半はひび割れだが、その他の変状も作業効率化の観点から自動検知の需要がある。競合の富士フイルムもAIを用いた社会インフラ画像診断サービスで同様の機能拡張をした。
キヤノンは、将来的に構造物の管理サイクル全体でのAI活用を見据える。すでに部材の劣化度合いなど構造物の部分的な損傷度を判定するAIの開発を東設土木コンサルタントと進めており、構造物全体の健全度評価・診断に発展させる方針。
インフラ点検におけるAI活用は、作業員の人手不足や高齢化といった既存の問題解決に加えて、作業の短時間化や少人数化などで新型コロナウイルス感染症対策にも通じる。2020年度の補正予算にはAIやIoT(モノのインターネット)を用いた産業インフラの保安管理の実証を支援する「産業保安高度化推進事業」も含まれており、関連技術やサービスの拡大に期待がかかる。