大学生による権利侵害、新たに生まれつつあるリスクに注意

連載・これってどうなの?著作権 大学の現場で#05

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学生の行為に伴う伝統的な著作権侵害は、いわゆるリポートのコピー&ペースト、参加型交流サイト(SNS)での無許諾の公衆送信などだ。各大学は情報リテラシー教育を進めているが、著作権の基本知識提供も求めたい。前任校の山口大学では、2013年度から初年時の全学必修で著作権と産業財産権を教える「知的財産入門(科学技術と社会)」を開講している。

その結果、学園祭実行委員会が市販の対戦ゲームを利用した競技を企画した際、賞品を出すために参加費を徴収するケースを委員会で検討し、教員に相談している。それに先だって学生は、該当ソフト開発会社の知的財産部に権利許諾可否の相談も行っていた。

他に吹奏楽部が「ハリウッド万歳」(原曲著作権は消滅)の曲を演奏し、その映像をウェブ配信する場合もリスクを検討。編曲の譜面に権利が存続すると気付いたため、権利期間が満了している古い譜面で再度、収録を行った。このように学生行動が変容した事例が多数、発生している。

次に新たに生じつつあるリスクを指摘したい。初めに学生がオンライン授業の異時公衆送信で取得したファイルをSNSなどでアップロードするリスクである。「授業の過程における教材利用が可能なだけで、広くは使えない」と指導を繰り返し行う必要がある。

【違法化拡大】

次に21年1月から施行される侵害コンテンツの私的複製(ダウンロード)違法化拡大への対応である。

従来、デジタル方式の録音・録画(音楽や映像)で、著作権を侵害する著作物の私的ダウンロードのみが違法だということは、違法コピー漫画サイトの「漫画村事件」で知られている。今回、著作物全般に対象が拡大され、権利を侵害した複製だと知りながら行うデジタル方式の私的複製は不可となる。

【管理見直す契機】

これにあわせて博士後期課程学生などが違法プログラムと認識しながら、研究で使用した場合に問題となる。研究業務としての使用を担当教員が暗黙でも了解していた場合は、大学が管理上の責任を負うことも考えられる。解析プログラムなど使用する大学では、入学前に違法プログラムをインストールしている学生も想定し、プログラム管理を見直す契機とすべきだ。

◇帝京大学教授・共通教育センター長 木村友久

日刊工業新聞2020年9月10日

COMMENT

山本佳世子
科学技術部
論説委員兼編集委員

山口大の全学必修の著作権教育での具体例がおもしろい。授業を受けた学生が、多様な活動の中で「これってどうなの?」とふと立ち止まり、そこから専門家に聞きに行くという。教養的な学びの理想的な展開となっている。

キーワード
著作権 山口大学

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