ユーチューブで授業教材を公開、著作権のここに注意!
【法的リスク】
著作権法35条1項のただし書き「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」で、気をつけるべきケースを検討していく。例えば「ユーチューブ」に代表される動画共有サービスを使って、授業教材をアップロードすることは、受講生に閲覧を限定する仕組みを使えば、利益を害することにならず問題ない。しかしユーチューブ利用規約には、コンテンツを投稿(アップロード)することで、ユーチューブの事業に関連して「当該コンテンツを使用(複製、配信、派生物の作成、展示および上演を含みます)するための世界的、非独占的、サブライセンスおよび譲渡可能な無償ライセンスを付与する」との規定がある。
つまり教員が他人の著作物を組み込んだコンテンツを授業で利用するためにアップロードしたとしても、ユーチューブ側はこれを無償で使えるという規定である。これでは著作権者の利益を害する可能性が出てきてしまう。新型コロナウイルス感染症対応時でもあり、類似の規約を持つ動画共有サービスの利用を否定するものではないが、学校管理者は法的リスクを飲み込んだ上で中期的な対応が求められる。
【利益を害する】
次に動画共有サービスを用いた授業での閲覧は、違法アップロードされた動画であれば著作権者の利益を害する可能性が生じる。例えば100人の学生に違法アップロードされた音楽ビデオを視聴させることで、当該音楽コンテンツ購入が阻害されることはあるだろう。コンテンツに注意する必要がある。
また、大学のラーニング・マネジメント・システム(LMS)に実装される、アップロード教材の管理機能でも注意が欠かせない。授業で利用する著作物別に、サーバーから削除するタイミングを細かく設定して、著作権者の利益を不当に害する可能性を軽減することが求められる。
【教材管理強化を】
日常業務に追われてLMS上のコンテンツ削除を忘れ、長期間そのままにしてしまうリスクを考えると、担当者が削除時間の予約まで1回で入力する機能の実装が望ましい。各教育機関は動画配信の増加に伴い、学内ネット回線容量の増速に腐心しているが、合わせてLMS上の教材管理機能の強化を図ることが求められる。
◇帝京大学教授・共通教育センター長 木村友久