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大学授業の教材開発、ハイブリッドのススメ

連載・これってどうなの?著作権 大学の現場で#04

各大学はオンライン授業に関わる改正著作権法35条施行に対応する研修を進めている。著作物使用に対する補償金負担は、将来的には学校管理者に発生するため、35条の範囲内で効果的に他人の著作物を利用した教材開発を進めておく視点が、ここでは重要になってくる。

筆者が所属する帝京大学では、2020年度前期授業は6月上旬まで音声を中心としたオンデマンド授業、それ以降は対面授業(教室定員50%以内で対処できる場合)を原則とした。しかし基礎疾患がある学生などへの対応により、結果として前期末まで対面とオンデマンド授業を併用する形になった。

そこで、対面参加学生とオンデマンド受講学生間の受講に伴う不公平感を軽減する目的で急きょ、筆者のドメインで受講者限定の動画配信サイトを作成した。

【どこまで可能か】

知的財産全般を扱う筆者担当の「法学I」は、事前収録型でテキスト全8章にわたり授業スライドと連動しながら説明する動画を作成してホームページ(HP)に配置した。当該テキストは筆者の研究グループで開発したもので、テキスト側に各章の課題シートと知識項目をまとめる宿題シートがあり、学生は記入したシートをスマートフォンなどで撮影して、ラーニング・マネジメント・システム(LMS)にアップロードする。また、特許法を扱う法学部専門科目では授業時の映像を編集してHPにアップした。

動画を組み合わせた教材例

前者はテキストを含む教材全体のパッケージ開発を完了しているケース、後者は著作権が発生しない判決文を多用したケースだ。従来から教員が工夫しながら蓄積してきた授業教材に、異時公衆送信可能となった著作物を適切に組み合わせる形とした。その意味では、改正法施行で明確化した異時公衆送信などの権利制限により、新たにどのような教材開発が可能になったのか思案する必要がある。

【考えながら】

筆者が後期に担当する「社会情報論I」用の動画教材の開発では、テレビ番組の一部を静止画あるいは動画で視聴させる場合の利用方法などを検討しながら動画編集を行っている。このように、プロトタイプの教材を作成しながら、改正法のただし書きなどの境界線を検討することも求められる。

◇帝京大学教授・共通教育センター長 木村友久
日刊工業新聞2020年8月27日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
授業の方式は秋から多くの大学で、「オンラインと対面のハイブリッド」となりそうだが、教材開発の素材も「独自に作成したものと、著作権フリーの外部素材のハイブリッド」とするのがベストのようだ。著者の木村氏の場合、著作権が発生しない判決文を多用するという。オンライン授業の進展で、他教員の教材も目に触れやすくなった。他の取り組みを参考にし、35条範囲内を学内の担当者と相談しながら秋からの、そして来年度のより磨きのかかった授業を思案してほしい。

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