企業が消費者に直接ポイントを発行、商品を支持する“ファンデータ”は活用できるか
三井物産がブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用し、食品メーカーや飲食店、ドラッグストアなどを巻き込んだ共通ポイントプログラムの構築を進めている。100%出資子会社であるグルーヴァース(東京都千代田区)が主体となり、共通ポイントプログラム「ウェルちょ」を今秋から本格的に始める。ウェルちょは企業が消費者に直接ポイントを発行するのが特徴。企業にとっては商品を支持する“ファンデータ”として、従来の購買データにはないアプローチでの分析にもつながりそうだ。(浅海宏規)
取り組みに当たっては、健康や環境などに配慮した国連の持続可能な開発目標(SDGs)のような意味ある取り組みに共感し、それを意識的に選ぶ「イミ消費」に着目した。
「これまでの“モノ消費”や“コト消費”を結びつけるイミ消費の取り組みとして、消費者の価値観に訴求しながら普及させたい」―。グルーヴァースの福島大地社長は、ウェルちょの意義についてこう語る。
2019年2月から5月にかけ、広島県でウェルちょの実証実験を行った。協賛する食品メーカーや飲食店などを「ウェルネス応援隊」とし、商品やサービスを通じて発行するポイントを「エール」と名付けた。
例えば、食品メーカーの商品などに2次元コード(QRコード)を割り振ったシールを付け、ユーザーは専用アプリからエールをためる。エールに有効期限はない。
エールを使える場所は「ウェルネスステーション」とし、病院・クリニック、ドラッグストア、飲食店、フィットネス施設などで活用できる。今秋からの本格展開では、個人間でエールを交換することにも対応する予定だ。
食品メーカーなどにとっては、エールの発行を通じて、どのような消費者が定期的に自社の商品を購入しているか、支持が得られているかといった分析が可能になる。「企業にとっては量販店を介しての販売数量データではなく、商品の“ファンデータ”を消費者から直接収集することが可能になる」(福島社長)と見ている。
今秋からの本格スタート時には、「ウェルネス応援隊」には食品メーカーなどを中心に約20社超が参加。「ウェルネスステーション」には150超の企業や団体が参加しており、2000―2500拠点で活用できる見通しという。
三井物産によると、ウェルちょには多種多様な企業が集まることから、プログラムを通じてSDGsの17全ての目標達成の推進につながることも訴求する。
あわせて価値を理解できるコミュニティーを形成していくことで、3年後にユーザー数で1500万人以上、ステーションで12万拠点以上を目指す。