ENEOSがケミカルシフト加速!生産再編の着手急ぐ

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ENEOSホールディングス(HD)は、新型コロナウイルス感染拡大により人の移動が制限されてガソリンなどの燃料需要が減退する中、ケミカル(石油化学製品)へのシフトを加速する。大田勝幸社長が日刊工業新聞のインタビューに応じ、「生産再編は中長期で考えているが、着手を早める必要がある。製油所を単に止めるのではなく、石化製品の生産に転換するなどの選択肢がある」との考えを示した。

エネルギー・素材両輪

「2040年に国内需要が半分になる想定で中長期計画を組み、それぞれの時間軸で打つ手を考えている」(大田社長)。17年4月に東燃ゼネラルとの経営統合により国内16製油所・製造所の体制となって以来、再編は進行中だ。19年4月に室蘭製造所(北海道室蘭市)を物流拠点化、川崎に2カ所あった製油所も集約した。10月には大阪の製油所の操業を停止する。現在も首都圏に6製油所・製造所を構えるなど生産最適化の余地は残る。

製油所以外の役割に移行する上で、大きなカギを握るのは石化製品だ。茨城県神栖市、川崎市川崎区、岡山県倉敷市、大分市の各製油所は石油化学コンビナート内にあり、石化製品の生産に転換しやすい。特に茨城の鹿島製油所は「ガソリン生産をゼロにして、ほぼケミカルを目指したい。三菱ケミカルと提携しており、いろいろな可能性を追求する」(同)と明かす。

ENEOSはパラキシレン、プロピレンを手がけ、それぞれアジア1位の供給能力をもつ。これら石化製品セグメントは市況悪化を受けて20年3月期に営業赤字190億円、20年4―6月期に同27億円と苦戦する。「海外プラントがどんどん立ち上がったという供給サイドの問題。燃料と違って石化製品の需要は伸び続ける。プラントがさらに立ち上がる予定はないので、時間の問題で需要が追いつき、供給過剰は解消される」(同)とみる。

基礎化学品だけでなく、付加価値や競争力の高い誘導品を拡大する戦略もある。また「ケミカルリサイクルも製油所をもっているところは可能性がある。できるのは石油会社だけだ」(同)と事業化を探っている。

大田社長は「戦略として、エネルギーと素材は両輪みたいなもの」と表現する。ともに原油を源流とする石油製品と石化製品。石化製品を強化することで、JX金属を傘下にもつ素材グループとしての存在感も高められる。コロナ影響が素材シフトを早めそうだ。

インタビュー/社長・大田勝幸氏 再エネ、M&Aも検討

6月にENEOSホールディングスに社名変更した。大田社長に新体制の推移や事業環境などを聞いた。(編集委員・川口哲郎)

―社名変更の狙いやその後の経過は。
「JXTGは一般になじみが薄く、変えた方がいいという声があった。先行してサービスステーション(SS)は19年から統一しており、取引先などから分かりやすくなったと好意的に受け止められている。JX金属やJX石油開発などはJXが浸透しており、変える必要はない。持ち株会社とエネルギー事業会社を一体化した体制となり、経営のスピードも上がった」

ENEOSホールディングス社長・大田勝幸氏

―新型コロナウイルスによる石油製品需要への影響をどうみますか。
「コロナ前の需要に戻ることはない。移動を減らした生活様式も定着するだろう。ガソリン販売は7月が8%減、8月が1割減の見込みで、下期も5%程度の減少は想定する必要がある。ジェット燃料需要が急減しているため製油所の稼働率を落とさざるを得ない。バランスとしてガソリンが足りなくなり、輸入などで補っている」

―再生可能エネルギーを主力電源にする動きが活発ですが、強化する考えは。
「再エネは現状16万キロワットで、22年度までに100万キロワットまで伸ばしたい。当初予算の投資配分の変更などは予定していないが、機動的に使える枠はあるので、M&A(合併・買収)も検討していく。LNG(液化天然ガス)や水素も伸ばす。それぞれのエネルギーの安定性やコストなどを考え、組み合わせていくことになる」

日刊工業新聞2020年8月31日

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