製油所統廃合前倒しも、石油元売り3社赤字の理由

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需要減少が速まれば、製油所の統廃合も前倒しが求められる

原油の価格下落と需要低迷が、石油元売りや上流企業の業績を直撃している。2020年4―6月期は元売り3社と石油資源開発が当期赤字となり、12月期決算の国際石油開発帝石も1―6月期に当期赤字1207億円を計上した。4月を底にした原油の大幅下落と、新型コロナウイルス感染拡大を受けた移動制限、これに伴う需要減少が大きく響いた。(取材=編集委員・川口哲郎)

在庫影響

元売り各社の業績に大きく影響しているのが石油製品の在庫だ。棚卸し資産の評価方法である総平均法では、期初の在庫単価と期中の仕入れ在庫単価を平均し、売上原価としている。市場では1月に1バレル=60ドル台後半だったドバイ原油が4月22日に同14ドルまで急落。4―5月原油価格が期首対比で大きく下落し、多額の在庫評価損が発生した。

4―6月期の在庫評価損は出光興産が944億円、ENEOSホールディングス(HD)が622億円、コスモエネルギーHDが342億円を計上し、当期赤字に陥る主因となった。出光の当期赤字813億円は4―6月期として過去最大だ。原油相場は産油国の協調減産で需給調整され、足元は同40ドル台前半で推移する。再び大きな下落がなければ在庫評価損も解消される見込みだ。

不安材料はコロナ禍からの需要回復が十分にみえないことだ。主力のガソリン販売は「4、5月は2割強の減少に対して6月は5%減と持ち直した。7月は長雨の影響もあり8%減。足元の出だしは下押ししている」(田中聡一郎ENEOS常務執行役員)状況だ。コスモエネHDも「ガソリン需要が連休になると落ちる。今後は慎重にみないといけない」(植松孝之取締役常務執行役員)とコロナ影響を見極める姿勢だ。

製油所再編検討

今後の焦点は、原油の需要減少が想定より速まり、製油所の統廃合を前倒しで進める必要があるかどうかだ。4―6月期の製油所の稼働率は出光が70%、ENEOSが68%、コスモエネHDは71・9%といずれも通常の90%前後から大きく下がった。稼働率が10―20%下がれば固定費の負担が重くなり業績に影響する。もともと各社はガソリン需要の中長期の低下を想定し合理化策を検討してきたが、「コロナの影響で(製油所再編の)計画を見直さないといけない。複数の前提条件でシミュレーションしている」(尾沼温隆出光興産財務部長)と対応を迫られている。

ENEOSは10月に大阪製油所(大阪府高石市)の操業停止を予定しており、次の再編は「単純な統廃合だけではなく、いろんな施策、最適化を検討している」(田中常務執行役員)。

ガス油田で減損

欧米の石油メジャーは4―6月期に巨額減損を計上し、主要5社合計で5兆円超の最終赤字に沈んだ。資源開発の構成比が高くない国内石油元売りはこのような巨額減損の対象が少ない。

一方、少なからぬ影響を受けたのが国際石油開発帝石だ。海外のガス田、油田プロジェクト(PJ)で合計1924億円の減損損失を計上した。豪州沖の浮体式液化天然ガス(LNG)PJ「プレリュード」はトラブルによる生産休止も考慮して1308億円を計上。豪州沖の大型LNGPJ「イクシス」は「生産が安定している」(山田大介取締役常務執行役員)として減損を見送った。

石油資源開発は減損を見送った。カナダのオイルサンドは埋蔵量が豊富で、「プロジェクトの性質などにより少なくとも現時点で対象にならない」(石油資源開発)という。カナダのシェールガスPJも18年3月期に減損を実施しており、追加措置に至らなかった。

新型コロナの影響は4―6月期に最も大きいとみられ、7月以降は回復基調に転じる期待があったが、感染再拡大リスクも浮上し先行き不透明感は強まっている。

またコロナ禍を機に欧米中心にエネルギー企業の脱炭素化の動きも加速しており、石油に依存した収益構造を転換するスピードもこれまで以上に求められそうだ。

日刊工業新聞2020年8月18日

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