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氷点下でも窓開放?「札幌市電」が頭を抱えている理由

氷点下でも窓開放?「札幌市電」が頭を抱えている理由

札幌市電利用者にとって我慢の秋・冬になりそう

札幌市の顔「札幌市電」が、新型コロナウイルス感染拡大で頭を抱えている。古い車両には換気装置がなく、現在は感染防止のため窓を開け、停車時の乗降口開放で換気している。だが札幌市は1日の最低気温が0度Cを下回る“冬日”が年間120日以上あり、秋・冬に向け寒さ対策が問題になりそうだ。(取材=札幌・市川徹)

札幌市電は市内中心部と南西部を結び、路線長は8・9キロメートルで24の停留所がある。一時は札幌市内の東西南北に総延長25キロメートル以上の路線が張り巡らされたが、自動車が普及し始めた1960年代半ば以降に乗客数の伸びも鈍化。さらに72年の札幌冬季オリンピック開催に伴う市営地下鉄の開業などで需要が急減した。全線廃止の案が何度も浮上したが生き残り、訪日外国人客(インバウンド)の増加で人気が回復した。

現在稼働できる車両は合計36台。50、60年代製造の車両では冷房・送風や換気の機能がなく、暖房もシートヒーター中心。運営主体の札幌市交通事業振興公社は3月から車内の窓を一部開け、2停留所ごとに乗降口の2か所を開放して強制的に換気した。春・夏は問題ないが、秋・冬は氷点下の日が続く。

同公社では「すべてを新型車両へすぐに更新できないし、春先と同じ対応をせざるを得ない。感染リスクを抑えることがやはり優先される」という。市電利用者にとっては我慢の秋と冬になりそうだ。

日刊工業新聞2020年8月24日

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