協働ロボットで市場拡大、普及のカギは「使いやすさ」
ロボットメーカー各社が協働ロボットの分野で周辺機器メーカーとのエコシステム(協業の生態系)形成を加速している。各社は協働ロボットの仕様やインターフェースを公開し、これらに準拠したソフトウエアや周辺機器を開発するメーカーを支援する活動を始めている。ロボット本体と周辺機器の接続をスムーズにすることで、使い勝手の良い協働ロボットを普及させ、市場全体の拡大につなげる狙いがある。(川口拓洋)
ロボットメーカー各社はグリッパー(把持装具)やセンサー、カメラなどの周辺機器メーカーに対し、同機器の設定画面を作れるプラットフォーム(基盤)を提供している。これにより周辺機器メーカーはロボット各社の製品に合わせて設定画面を作成でき、ロボット本体と周辺機器の接続が容易になる。
ファナックは6月から量産出荷を始めた新型協働ロボット「CRXシリーズ」から本格的にインターフェースの公開などを開始。CRXシリーズでは周辺機器メーカーのソフトウエア機能を追加することで、設定画面から周辺機器へ命令を実行できる。また周辺機器のソフトを開発するツールも提供する。山口賢治社長は「ロボットを実際に使うためにはハンドを搭載するなど周辺機器が必須になる。『お客さまでご自由に』では普及は進まない」と打ち明ける。
三菱電機は、5月下旬に市場投入した同社初の協働ロボット「メルファ・アシスタ」でパートナーとの連携を進める。専用エンジニアリングツール「RT VisualBox」でパートナー企業が開発した周辺機器を簡単に接続・設定できる。この動きを推進するため、同社は「協働ロボットパートナー会」を19社で発足した。例えば田辺工業は専用の無人搬送車を開発し三菱電機製ロボットとの連携を実現したほか、エヌアイシ・オートテックは専用の台車を組み合わせた。
一方、エコシステムの取り組みが先行するのはデンマークのユニバーサルロボット(UR)。周辺機器をパートナーが開発した場合に「UR+」として認証し、URの専用サイトで紹介している。キヤノンを皮切りに多数の日本企業の製品が認定を受けており、機器と円滑に接続できる点を訴求している。
協働ロボットは生産技術部隊など製造現場の専門家でなくても容易に自動化を実現できるのが特徴だ。ロボット本体と周辺機器の接続を容易にすることが普及のカギを握るため、エコシステムの形成がロボットメーカー各社の新たな戦略になっている。
ファナックの山口社長も「周辺機器メーカーとウィン・ウィンで協力する。それはお客さまの求めでもある」と強調する。
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