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コロナだけじゃない!老舗スイッチメーカーが倒産へと堕ちた中国工場の機能不全

旭東電気の現地法人、感染拡大前から経営悪化

旭東電気は1945年に創業した老舗の電気開閉器メーカーだ。かつては炊飯器や洗濯機のプッシュ式スイッチなどを製造。近年は住宅用分電盤に内蔵される安全ブレーカーや、温水洗浄便座用漏電保護プラグなどを主力としていた。

EMS(電子機器製造受託サービス)事業として電子機器の受託生産も行いながら、90年代以降は採算改善と市場開拓を目的に海外展開を加速。合弁で中国に工場を建設したのを皮切りに2009年、12年と工場を相次いで建設し、グループ売上高は300億円を上回っていたと言われる。

同社の倒産(4月28日に民事再生法の適用を申請)は、新型コロナウイルス関連倒産の一つに数えられた。新型コロナ感染症拡大で外出制限がかかり、中国の各工場が機能不全に陥った影響が残ったためだ。しかし、感染症の拡大前から経営悪化が進行していた点を見逃してはならない。

歯車が狂い始めたのは13年頃。中国の現地法人は急速なドル高円安の進行による価格競争力低下と人件費上昇による採算悪化を受け、車載用スイッチ事業に活路を求めた。しかし、この投資は事業計画が不十分なまま実行され、結果として赤字を垂れ流してしまう。

この損失を取り戻そうと現地法人はベトナム進出を打ち出したが、中国各工場の収益改善が後手に回り、限定的な投資効果しか得られなかった。何よりも問題だったのは現地法人から十分な情報共有がなく、ガバナンスを利かせることができていなかった点だ。

現地法人は過剰債務を抱え、現地金融機関に返済猶予を申し入れたが、4月末に日本円換算で約5億円を一括返済するように求められた。現地法人を資金面で支えてきた旭東電気は取引金融機関に私的整理を申し入れたが、現地金融機関への優先的な借入金返済には理解が得られないまま、保証債務の履行を迫られるリスクが高まり、民事再生法の適用申請を選択した。

(帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2020年8月18日

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