日本製鉄・JFE・東レ・ソニー...製造業で設備投資の下方修正相次ぐ
大手製造業の設備投資計画の下方修正が相次ぐ。2020年4―6月期や1―6月期決算発表で日本製鉄、JFEホールディングス(HD)、東レ、ソニーなどが従来計画した投資額の圧縮を公表した。新型コロナウイルス感染症に伴う需要縮小が幅広い業種に影を落としており、投資案件を厳選する姿勢が鮮明になっている。
日本製鉄、「選択と集中」加速
鉄鋼大手各社は、米中貿易摩擦などによる鋼材需要減にコロナ禍が拍車をかけ、設備投資計画を再度見直す。高炉の設備は老朽化するほど改修費用がかさむことも踏まえ、経営資源の「選択と集中」で高炉の停止や拠点閉鎖など合理化策を打ち出している。各社は今後の需要回復次第で合理化策の前倒し・追加を検討するとしており、設備投資がさらに減額される可能性もある。
日本製鉄は、19年3月期―21年3月期の3年間の投資額を1兆4000億円程度とした。当初計画の1兆7000億円を19年秋に約2000億円圧縮する方針を打ち出した。4―6月期決算発表で、圧縮額をさらに約1000億円追加した。
21年3月期の工事ベースの設備投資は、前期並みの4800億円程度を予定。高付加価値商品の比率を高めるため、北九州市戸畑区と姫路市広畑区で電磁鋼板ラインを整備する。競争力の強化を目的とした高炉の改修工事も進める。宮本勝弘副社長は「足元のコロナの状況を受け、さらに下げた。落とせるところは落とす」と強調した上で、「(23年9月末の広島県呉市の拠点閉鎖など)構造対策で各製鉄所の役割を明確にした。設備投資に軽重を付けられる」としている。
JFEHDも同3カ年で1兆円とする計画を、1300億円減らして8700億円とした。19年秋には圧縮額を1000億円としていたが、4―6月期決算発表で300億円追加した。柿木厚司社長は「コロナ禍で案件を精査した。安全、環境、防災関連など、人命にかかわる投資は削らない」とする。
【関連記事】コロナ禍でのサプライチェーン、国際輸送の最適解とは?東レは21年3月期の設備投資額を期初見通し比200億円減の1430億円に下方修正した。「感染拡大による需要減などの事業環境の変化や工事の進捗(しんちょく)遅れを受け、変更した」(岡本昌彦取締役上席執行役員)。クラレは20年12月期の設備投資額(受け入れベース)を950億円とした。2月に発表した期初計画と比べ50億円減となる。「不要不急の設備投資は繰り延べるが、安全に関する投資は変えない」(伊藤正明社長)とし、大幅な方針変更はないとしている。
ソニー、スマホ市場減速で見直し
ソニーは19年3月期―21年3月期に予定している約1兆2000億円の設備投資のうち、イメージセンサー関連の累計設備投資額を計画比500億円減の約6500億円に抑える。コロナ禍によるスマートフォン市場の減速や、高価格帯製品の販売減少を受けて「22年3月期の需要に向けた投資を大幅に抑制している」(十時裕樹副社長兼最高財務責任者〈CFO〉)。22年3月期以降の投資計画も時期を見直している。