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「入力作業の二度手間」なくすには3Dモデルで!図面入力をスマート化

おすすめ本の抜粋「設計者は図面で語れ!ケーススタディで理解する幾何公差入門」

近年、3 次元測定機の世界では大きな変化が起きている。非接触式の3 次元測定機の性能が上がっており、運用性向上が著しい。これによって、図面情報の統合運用の具体的な道筋が確立されつつある。
 図面情報の統合運用といったが、端的にいえば「入力作業の二度手間」をなくす、と捉えていただければわかりやすいのではないだろうか。

設計者の例を挙げる。現在、製図を行うツールは3 次元CAD が主流であるが、出力される図面は2 次元図面が圧倒的に多い。そんな中、製図に際して設計者は何をしているかというと、図1 に示すように、3D モデルの投影図を2 次元に描き出し、サイズ寸法と公差、材料情報など様々な情報を記載している。
 当たり前のように思うかもしれない(筆者もそう思っていた)が、この時点ですでに二度手間をやってしまっている。

図1 モデリングをしてから製図

なぜならサイズ寸法の情報は3D モデルができた時点ですでにデータとして入力済みなのだ。設計検討時に強度解析などをやっているなら材料情報もモデルデータに入力済みのはずだ。
 検査の領域でも二度手間が存在している。現状のほとんどの測定機の評価システムは、測定値と比較するための設計値(寸法・公差)をあらかじめ入力しなければならない。だがこの作業は設計者が3D モデル、あるいは図面に対してすでにやっている作業である。

非接触式3 次元測定機は、実測の結果を3D モデルとして出力することができる。さらに、評価ソフトウェア上でCAD モデルと重ね合わせて、実物との差(偏差)を自動的に算出することが可能になった。これにより、サイズ寸法情報の入力をせずとも偏差の評価ができるようになった(図2)。

図2 モデルとの差を表示(使用ソフト:GOM Inspect)

公差情報入力の二度手間も、3DA モデルの普及によって解消されようとしている。3DA モデルは「公差や図面指示などの図面情報を持った3D モデル」であり、3DA モデルの情報を読み込むことができる評価ソフトウェアであれば、公差情報入力の二度手間をもなくすことができる。最新のISO やASME の改定ではすでに3DA モデルに関する規格が存在している。日本でもJIS B 0060 として規格化が始まっている。

CAD モデルと測定後の実測モデルの照合評価によって、二度手間による工数の重みが解消される道筋がついた。この場合の照合評価とは、実物の形と理想の形を比べるものである。この理想の形を規定する具体的な手段こそが幾何公差であり、業務効率化の観点からも、幾何公差の重要性は高まっている。
(「設計者は図面で語れ!ケーススタディで理解する幾何公差入門」より一部抜粋)

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<書籍紹介>
不要な幾何公差をなくすために、設計者は意図を明確にし、適切に幾何公差を使い、生産側(特に測定方法)の実態を知る必要がある。本書では図面を幾何公差化するための、公差設計の進め方を事例で紹介。測定方法は写真とともに解説する。

書名:設計者は図面で語れ!ケーススタディで理解する幾何公差入門 公差設計をきちんと行うための勘どころ
監修者名:栗山弘
著者名:栗山晃治・北沢喜一
判型:A5判
総頁数:196頁
税込み価格:2,640円

<監修者>
栗山 弘(くりやま・ひろし)
株式会社プラーナー 会長
1976年、セイコーエプソン入社。24年間、開発・設計部門でウォッチや映像機器などの世界初商品の開発に従事。2000年に設計・技術研修センター部長に就任。同社在籍中およびそれ以降を含め約300件の特許を出願する。2001年にプラーナーを設立(社長)、2012年から会長。
高度ポリテクセンターや信州大学のほか、約100社の上場企業内で公差解析や設計教育で指導実績を持つ。企業にて約1,200テーマの実務課題解決を支援し、当該企業からその成果事例も多数発表されている。3次元設計能力検定協会理事なども務める。おもな著書に「3次元CADから学ぶ機械設計入門」(森北出版)、「公差設計入門」(日経BP)などがあるほか、「機械設計」(日刊工業新聞社)や「日経ものづくり」(日経BP)など技術雑誌への寄稿が多数ある。

<著者>
栗山 晃治(くりやま・こうじ)
株式会社プラーナー 代表取締役社長
3次元公差解析ソフトをベースとした大手電機・自動車メーカーへのソフトウェア立ち上げ・サポート支援、GD&T企業研修講師、公差設計に関する企業事例の米国での講演などにより実績を重ねる。3次元解析ソフトを使用したGD&T実践コンサルなど、さらなる新境地を開拓している。著書は「強いものづくりのための公差設計入門講座 今すぐ実践!公差設計」(工学研究社)、「3次元CADから学ぶ機械設計入門」(森北出版)、「3次元CADによる手巻きウインチの設計」(パワー社)、「機械設計2015年5月号 特集 グローバル時代に対応!事例でわかる公差設計の基礎知識」(日刊工業新聞社)など、多数。

北沢 喜一(きたざわ・きいち)
株式会社プラーナー シニアコンサルタント
セイコーエプソン株式会社にて、時計の外装設計・技術に長年携わり、開発設計における幅広い視野での知識と経験を持つ。その経験を活かし、2017年より株式会社プラーナー シニアコンサルタントとして、数多くの企業・公的機関にて公差設計、幾何公差の教育およびGD&T実践指導などを行う。

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