10円でも売り切る! 企業が取り組む廃棄ロス削減
食べられるのに賞味期限(用語参照)間近のため廃棄される食品、品質に問題がないのに箱がつぶれているため捨てられる化粧品などは数多い。こうした商品ロスの削減に、フェリックス(神奈川県平塚市)やアスクル(東京都江東区)が事業として取り組んでいる。消費者の「もったいない」という意識の高まりが追い風となって、事業は軌道に乗り始めている。(編集委員・丸山美和)
10円にしてでも
フェリックスは都内と神奈川県内に計8店の自社店舗を持つ。店には賞味期限切れのジュースや賞味期限間近のカップ麺や菓子など約200品目が並ぶ。仕入れ前の保管状態が悪かったものや賞味期限から1年を超えたものは扱わないなど独自の取り扱い基準を設け、官能検査(五感による検査)実施後に販売している。
来店が多いのは近隣の主婦や高齢者、単身者。商品の中には一般の小売店の価格の7割以下のものもあり、人気商品はあっという間に売り切れる。だがそれでも売れ残る商品はある。「その時には価格を10円にしてでも売り切る。利益を圧迫するが、あくまで主目的は廃棄ロスの削減」(鈴木盛人取締役営業本部長)とする。
これまで賞味期限までの期間が3分の1を超えているため小売店に納品できず廃棄してきたメーカーや卸売業者などから「フェリックスの販売ルートであれば安心」と評価され、「品質には問題ない。買い取ってほしい」という依頼が増えている。販売量も増えていることから、2年以内には100店舗体制にし、物流倉庫も新設する。
メーカーも協力
アスクルが運営するインターネット通販サイト「ロハコ」内には「ロハコアウトレット」があり、その中で商品の廃棄ロス削減を明確に打ち出した取り組み「ゴーエシカル」を本格化している。
2019年以降、従来廃棄処分されていた日用品などをアウトレット品として販売してきた。ゴーエシカルのページでは現在、化粧品や製薬会社の計3社と協力。品質に全く問題がないが、シーズンごとに店頭からメーカーに戻ってきた口紅、販売終了で余ってしまった未使用容器に新商品を詰めた化粧水など100品目以上を低価格で販売している。商品だけでなく容器などの副資材も無駄にしない取り組みだ。
品質に問題がなく低価格となれば、通常価格の商品が売れなくなりそうだが、「アウトレットを起爆剤にして新商品も売れる。販売終了のタイミングで売り切ることもでき、ロハコアウトレットが広告の一部を担う役割を果たしている」(野中勉マーチャンダイジング本部バリュー・クリエイション・センター統括部長)という。
フェリックス、アスクル、いずれも企業による事業のため流通経路が明確で、メーカーも安心して商品を販売できる。消費者の理解も高まっており、製造元や販売元を巻き込んだ廃棄ロス削減が根付きそうだ。
【用語】 賞味期限=保存方法を守れば、おいしく食べられる期限。カップ麺など、いたみにくい食品に表示。期限を過ぎてもすぐに食べられないわけではない。また消費期限はいたみやすい食品を安全に食べられる期限。