プライマリー・バランス黒字化は2年後ずれ、内閣府試算に目立つ“願望”

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景気がさらに落ち込めば歳出拡大圧力が強まるのは必至

財政再建の指標である国・地方の基礎的財政収支(PB)の黒字化が、従来の見通しより2年遅れて2029年度にずれ込むとの試算を、内閣府がまとめた。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた大型経済対策の財源として、57兆円余りの国債を増発したことを踏まえた。財政健全化に向けて政府が掲げる25年度黒字化の目標がさらに形骸化した。

先週末の経済財政諮問会議で内閣府が示した中長期の財政見通しによると、政府の経済政策が奏功し、国内総生産(GDP)の名目成長率がおおむね3%台で推移すると想定した場合で、国・地方のPBの黒字化は29年度になる。政策効果が乏しくて名目成長率が0―1%台にとどまった場合は、29年度時点でも名目GDPの1・7%に当たる10兆3000億円の赤字が残る。

1月時点では政策効果が表れる「成長シナリオ」の場合でPBは27年度に黒字化し、そうでない「標準シナリオ」でも29年度時点での赤字は8兆円程度にとどまると試算していた。コロナ禍による景気の悪化で税収が下ぶれる見通しとなったことや、大型補正予算の編成に伴う国債増発を踏まえて修正した。

西村康稔経済再生担当相は諮問会議の後の会見で「(社会保障費の伸びを抑えるなどの)歳出改革を続ければ、黒字化を3年程度は前倒しできる」と述べ、目標を堅持する考えを表明した。だが名目で3%台の高成長はここ20年余り経験がなく、実現は容易でない。また感染の第2波が起きて景気がさらに落ち込めば、歳出拡大圧力が強まるのは必至だ。

市場の受け止め方は厳しい。欧・米系格付け会社のフィッチ・レーティングスは先ごろ日本国債の格付けの見通しを、従来の「安定的」から「弱含み」に引き下げた。

日刊工業新聞2020年8月3日

COMMENT

志田義寧
北陸大
准教授兼ジャーナリスト

コロナ禍のショックに対応するために、政府は矢継ぎ早に対策を講じた。国民1人あたり10万円を給付する特別定額給付金など、対象や効果に疑問が残る政策もあるが、この局面で財政出動を躊躇すれば、ショックは更に深刻化する。財政収支の大幅な悪化は止むを得なかったと言える。しかし、だからと言ってこのまま野放図に借金を膨らましていいわけではない。国債の国内消化を支えている経常収支の黒字がこの先も続くと見るのは、いくらなんでも楽観的過ぎるだろう。波乱の引き金を引きかねない海外投資家の国債保有割合は1割強に過ぎないが、売買シェアは現物で4割弱、先物に至っては6割程度まで上昇しており、価格形成に大きな影響力を持っている。海外勢が財政の信認にノーを突きつければ、金利が跳ね上がるリスクも否定できない。今回の試算は“願望”が目立った。海外勢も納得できる、より現実的な成長戦略と財政再建に向けた道筋を示す必要がある。

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