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反日世論を気にせず対話できる文在寅政権、コロナ対策で日韓協力は実現するか

大阪市立大・朴教授に聞く「大阪は韓国をよく研究している」
反日世論を気にせず対話できる文在寅政権、コロナ対策で日韓協力は実現するか

18年5月の日韓首脳会談(首相官邸公式ページより)

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う医療崩壊を防ごうと、大阪を中心に軽症者をホテルなどの施設で受け入れるフォローアップ体制(病状に応じた振り分け)の整備が進む。いち早く同制度を導入し検査体制を拡充してきた韓国では、新たな感染者数が4月18日時点で1ケタ台に減り、企業活動の再開が段階的に始まった。今後日本がとるべき対応について、韓国経済に詳しい大阪市立大学大学院経済学研究科の朴一(パク・イル)教授に聞いた。(聞き手・大川藍)


―ドライブスルー検査など、韓国の医療体制に注目が集まります。

「2月に大邱市で起きた教会での集団感染事件を機に、フォローアップ体制の整備が進んだ。サムスン電子やLG電子が社員の研修センターを軽症者の療養所として開放するなど、官民一体で受け入れ態勢を整え、検査数の増加に対応できるようにした。1日の検査数は約1万5000人と日本の5倍以上だ。大阪府がやっている軽症患者のホテル療養は韓国をよく研究していると思われる」

―韓国では医療崩壊が起きませんでした。

「陽性患者が出てからの対応だ。韓国では陽性者の位置情報がアプリを通じ保健所に通知され、住民番号(日本のマイナンバー)や渡航歴、クレジットカード利用歴などあらゆる行動を把握できる仕組みをつくった。徹底的に感染経路の確認に努め隔離したことで、結果的に医療崩壊せず感染者数を減らすことに成功した」

―大阪府でも軽症者のホテル療養やワクチン開発などが進んでいます。

「大阪府は全国に先駆けフォローアップシステムを導入するなど対応が早い。休業補償も厳しい財政ながら対応し、政府をも動かしている状況だ。また今回の自粛要請に対し、梅田周辺の人口が4月20日頃に85%減少するなど、想像以上に大阪の人が自粛へ応じた。こうした大阪モデルが日本復活のカギを握ると考える」

―韓国では企業活動を一部再開しました。

「4月19日からようやく街に人が出て経済活動が戻ってきた。ただ、国内市場の小さい韓国は日本や米国、中国など世界市場の復活を待つ必要がある。先日の総選挙では与党の『共に民主党』が安定議席を獲得し、文在寅政権は国内の反日世論を気にせず日本と自由に対話できるようになった。韓国が量産するPCRキットの導入など、日韓の協力で医療体制を築くべきときに来ている」

大阪市立大学大学院経済学研究科教授・朴一氏
日刊工業新聞2020年5月1日
小川淳
小川淳 Ogawa Atsushi 編集局第一産業部 編集委員/論説委員
新型コロナウイルスの感染拡大の防止に向けての取り組みは、各国でスタンスややり方が異なります。それぞれ国民性やコンセンサス、法律や医療体制など事情がことなり、これが正解というのはなかなか難しいです。各国で情報交換に厚みを持たし、よりベターな解決策を国際協調で模索していくしかないのかもしれません。

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