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「再生エネ比率を40%に」政府目標を飛び越えた経済同友会、提言の意図

経済同友会が再生可能エネルギー普及に向けた提言で野心的な数値目標を掲げた。2030年の電源構成に占める再エネ比率を40%にすべきだとした。原子力発電所の再稼働が進まない中、政府の温室効果ガス削減目標を達成するには再エネ比率を大幅に引き上げる必要があると主張している。

40%の内訳は太陽光・風力発電で30%、水力・バイオマス・地熱などの発電で10%とした。電力需要が現状並みに推移すると仮定して、太陽光発電と風力発電の設備容量はそれぞれ1億2000万キロワット、6000万キロワット必要になると試算した。

18年度の再エネ比率の実績値は17%で、政府が30年度の目標としている再エネ比率は22―24%。提言をまとめた石村和彦副代表幹事(AGC取締役)は「高い目標だが太陽光発電の拡大ペースや海外の事例を鑑みると、政策誘導と民間の継続的な投資があれば達成は十分可能だ」としている。

原発の比率については、再稼働の社会的受容が高まらない上、大規模な再開が難しい現状では低く見積もらざるを得ないとして、稼働中と稼働申請中の原発がすべて稼働すると仮定し15%とした。東京電力福島第一原子力発電所の事故以降、経済同友会は原発の依存度を減らす「縮原発」を打ち出しているがそのスタンスは変えていない。

また、今回の提言は再エネにテーマを絞っており、政府が旧型の石炭火力発電所の休廃止を検討していることは反映していない。この点について、石村副代表幹事は「過去の提言でも触れてきたが、効率の悪い石炭火力発電は高効率に置き換えるべきだ。30年に石炭火力がすべてなくなると(電力が)足りなくなるのは確かだ」としている。

提言では太陽光・風力発電の大量導入の課題として、発電コストの低減、系統問題の解消、バックアップ電源の整備を挙げた。太陽光発電のコスト高は土地造成などの工事費が一因だとして、今後造成費のかからない工場やオフィスの屋根など需要地に近い場所に設置を進めるべきだとした。系統問題の解消では、既存系統と再エネ立地の不一致が原因で起こる系統混雑の解消に向け、長期的な再エネの導入目標やその賦存量を見込んだ制度設計を行うべきだとした。

石村副代表幹事は「高い目標を設定し、地球温暖化やエネルギーに対する国民の意識改革と行動変容につなげることが不可欠だ」と40%目標の意義を強調している。

日刊工業新聞2020年7月30日

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