九州豪雨の鉄道被害、全貌把握に時間。JRや「おれんじ」の経営を直撃

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流失した肥薩線の球磨川第一橋梁(JR九州提供)

7月初旬から日本付近を停滞する梅雨前線は、九州をはじめとする各地で記録的な豪雨をもたらした。特に熊本県で南部を中心に甚大な被害が発生。鉄道は九州から東海までの広い範囲で、9事業者13路線が被災している。12日までに345件の被害を確認したJR九州は、今後の天候回復をにらみながら「19日までは警戒態勢を維持する」(広報)見通し。被災地では累積雨量がかさんでおり、土砂災害の危険性も指摘されている。いまだ道路が寸断されているため、被害の全貌を把握できていないのが現状だ。

中でも熊本県南部の肥薩線と大分県内の久大線では、河川増水によって橋が流出した。掛け替えには、河川管理者と護岸工事に関する調整が必要になることから、復旧見通しが立てられない状況。年単位で不通が続く可能性もある。

肥薩線は65件、久大線は145件の被害があり、復旧には長期の工期が見込まれる。両線ともに生活の足であり、人気の高い観光列車を運行する路線。新型コロナ収束後の挽回を期していた地域の観光産業にとってもダメージは計り知れない。

一方、復旧には相当の資金が必要となりそうだ。JR九州も多くの赤字路線や老朽化した設備を抱え、台所事情は非常に苦しい。長期的に路線を、どう活用していくか。沿線地域と議論しながら、補助金申請など復旧方法を考えることになる。

かつての主力路線、鹿児島線も熊本県内で甚大な被害を受けた。九州新幹線の開業で旅客輸送のメーンルートではなくなったが、熊本・鹿児島方面には1日6往復の貨物列車が設定されており、本州との物流を担う。

JR貨物の真貝康一社長は「できるだけ早期に復旧してほしい」と期待する。鹿児島からの青果品出荷が盛んな時期で、鉄道貨物は大都市圏向け農産物の物流にとって欠かせない存在だ。熊本まで復旧するのは今のところ8月上旬になりそう。それまでは福岡や北九州からトラックで代行輸送することになる。

厳しいのは熊本以南だ。九州新幹線開業後に、熊本・鹿児島両県にまたがる鹿児島線の八代―川内間は、経営を分離する“並行在来線”として、両県らが出資する第三セクター鉄道の肥薩おれんじ鉄道(熊本県八代市)に移管された。同鉄道線では、45カ所で土砂流入や道床流出などがあり、橋流出のような致命的な災害はないが、復旧のめどは立っていない。

おれんじ鉄道は道路網整備で沿線の鉄道離れが進み、通学利用が中心。経営状態は厳しく、JR貨物の線路使用料が収入を支えている。災害復旧の負担は、脆弱(ぜいじゃく)な経営基盤にとって大きな痛手だ。

鹿児島線・玉名―肥後伊倉間で発生した土砂流入現場(JR九州提供)
(取材・小林広幸)

日刊工業新聞2020年7月17日の記事から抜粋

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