米国発スタートアップ向けシェアオフィス、日本進出の狙い
スタートアップ向けシェアオフィス、虎ノ門ヒルズに拠点
米ケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC、マサチューセッツ州)は9月上旬、アジアで初となる拠点を東京に開設する。同社はスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)などが入居するイノベーションコミュニティー形成に向けたシェアオフィスを展開する。A・T・カーニー日本法人会長で、拠点の設立責任者である梅澤高明CICジャパン会長に、最近のスタートアップへの投資状況や日本での事業展開など聞いた。(浅野文重)
―新型コロナウイルス感染拡大はスタートアップにどのような影響を与えていますか。「スタートアップへの投資は世界的に慎重になってきている。まだ出口が見えてこない状態だ。新型コロナ発生前では、投資家はスタートアップが赤字でも、その顧客獲得のために投資してきた。顧客を確保した上でスタートアップのビジネスモデルを確立させ、利益を狙っていた。しかし、新型コロナ感染拡大でこの流れは止まった。投資家はキャッシュフローなどスタートアップの財務体質を気にするようになった」
「ただ、新型コロナの収束が見えれば、どの分野がどの程度伸びるかを分析し、(新規)投資先の獲得を目指すことになるだろう」
―スタートアップを巡る海外と日本での違い、また、日本の有望分野は。「スタートアップ大国の米国や中国と比べ、日本のベンチャー投資額は小さい。海外はベンチャーにイノベーションを求めている。日本ではロボティクスやメカトロニクス、ライフサイエンスは期待できる分野だ。基礎研究や論文などが多く、技術優位性が発揮されやすい分野だ」
―日本のスタートアップ振興で求められることは何でしょう。「世界で通用するためにはネットワークづくりが求められる。技術優位性だけでは世界を制覇できない。日本の投資家だけでは限界がある。海外の投資家を招き、彼らの持つネットワークを生かす。これもCICのミッション(使命)のひとつで、そうした場をつくることも重要だ」
―CICの日本での今後の取り組みは。「虎ノ門ヒルズ(東京都港区)に『CIC Tokyo』を9月上旬に立ち上げる。スタートアップやVC、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、アクセラレーター、弁護士、税理士なども入ることで、スタートアップ支援に向けたエコシステムを構築する。スペースは約6000平方メートルと日本で最大規模のイノベーションコミュニティーとなる。最初の1年間で100社のスタートアップを集めたい。また、女性起業家や外国人起業家なども多く集まるシェアオフィスにしたい」