ニュースイッチ

週イチでほんの些細なことでも、職場で幸せを感じられる作法

「貢献感こそが人を幸福にする」
週イチでほんの些細なことでも、職場で幸せを感じられる作法

職場できることはたくさんある(写真はイメージ)

「幸せだというプラスの感情が、平均9・4年もの長生きにつながった」。これは幸福学の第一人者エド・ディーナー氏(米イリノイ大学心理学名誉教授)の論文に示された「幸せ」であるという感情が「健康」に与える調査結果の一つである。では、人はどのようなときに幸せを感じるのだろうか。自分の意思で幸せだと感じられるようになるコツと、ポジティブな自分でいるために組織の中でどう振る舞うと良いかについてお伝えする。

ポジティブ心理学の研究によると、幸福感は「遺伝や気質など持って生まれた生物学的設定範囲」「状況・状態」「自由意思による活動」の三つの要素によって決まるとされている。注目したいのはその比率である。

「状況・状態」すなわち「裕福か、貧乏か」「健康か、病気か」「器量よしか、人並みか」というようなことは、幸福感に10%しか影響を与えない。一方で、「自由意思による活動」は、40%も幸福感に影響を与えるという。つまり、私たちは自分の自由意思で幸福感を感じられるということである。

では、どのような活動が幸福感につながるか。「笑うこと」「良い言葉を使うこと」「感謝すること」「自然と触れ合うこと」など選択肢はいくつもあるが、今回は「人に親切にすること」を取り上げたい。米カリフォルニア大学の心理学教授であるソニア・リボムスキー氏の研究によると、週に1回、誰かに親切にすると幸福度が上がるという。親切の内容が毎回同じだと効果が薄れ、変化に富む行いだと効果が高まる。また、アドラー心理学では、「貢献感こそが人を幸福にする」とされている。

そこで、自分自身が幸せで健康でいるためにも、職場での人間関係を円滑にするためにも、週に1回は、職場の人に親切にするということを実践してみてはどうだろうか。

大層なことでなくて構わない。相手が欲しがっていた情報についてメールする、手が空いているときに仕事を手伝う、わからないことを教えてあげる、同僚の仕事の効率が上がるツールを作る、資料を共有する、元気がない顔をしていたら「最近どう?」と声をかけるなど、些細なことも含めると、できることはたくさんあるだろう。

さらに、自分自身が人に親切にするように変化すると、周囲はまるで鏡のように、自分の変化に応じて変化する。親切にした分、人から親切にされることが増え、自分から相手とつながりを持とうとすれば、その気持ちを映し出すかのように、相手も自分に歩み寄ってくれるようになる。

情けは人のためならず、という諺(ことわざ)は、ポジティブ心理学の研究結果と一致している。人に優しくすれば良い気分になるということを、ぜひ実感してみてほしい。

(文=SOMPOヘルスサポート シニアゼネラルコンサルタント・桜又彩子)
日刊工業新聞2020年7月2日

編集部のおすすめ