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実質賃金大幅マイナス、消費者マインドが冷え込む中で物価は下がる?上がる?

厚生労働省が7日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、給与総額のうち残業代を中心とする所定外給与は前年同月比25・8%減の1万4601円で、比較可能な2013年1月以来最大の下げ幅となった。名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は、同2・1%減と3カ月連続のマイナス。減少率は15年6月(2・8%減)以来約5年ぶりの大きさだった。

新型コロナウイルス感染症対策として在宅での仕事が広がり、残業代が減ったことが賃金の減少につながっている。製造業の所定外労働時間は前月比17・1%減(季節調整済)となった。

1人当たりの現金給与総額(名目賃金)は、前年同月比2・1%減の26万9341円。総実労働時間は一般労働者が同8・8%減の144・3時間、パートタイム労働者が同13・4%減の71・6時間。基本給などの所定内給与は、同0・2%増の24万3765円だった。

日刊工業新聞2020年7月8日

【ファシリテーター・志田義寧氏の見方】

新型コロナウイルス感染症の影響で、人々は生活防衛意識を強めている。記事にあるように、5月の実質賃金は前年比2.1%減と約5年ぶりの減少率を記録。一方、総務省が同日発表した5月の実質消費支出も前年比16.2%減と比較可能な2001年1月以降で最大の落ち込みとなった。賃金が減れば、消費を抑制する。当然の行動だ。

景気動向は景気の「気」、つまり人々の期待が重要な役割を果たす。政府がいくら実弾を投入しても、人々の期待が上向かなければ政策効果は限られる。

期待をみる上で筆者が重視している調査がある。日銀が四半期ごとに実施している「生活意識に関するアンケート調査」だ。7日に発表された2020年6月調査では、人々の景況感はマイナス71.2となり、3月調査から34.9ポイント悪化、過去最大の悪化幅となった。 人々のマインドが急速に萎んでいる様子がうかがえる。

<続きはコメント欄で>
志田義寧
志田義寧 Shida Yoshiyasu 北陸大学 教授
となると気になるのが物価への影響だ。同調査では、日銀が中長期的な物価動向を見る上で重視している5年後の物価予想も聞いている。依然として「かなり上がる」と「少し上がる」が大勢を占めているが、その割合はじわりと低下。一方で「少し下がる」と「かなり下がる」が小幅に増加している。 物価は需給ギャップと人々の期待の影響を大きく受ける。この2つは、いわば車の両輪だ。その片方である期待が崩れれば、物価にさらなる下押し圧力がかかりかねない。 今回の新型コロナウイルスは、供給ショックも引き起こしているため、予期せぬ物価上昇への目配せも欠かせない。しかし、目先警戒しなければならないのはやはりデフレの再燃だ。 5月の全国消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年比0.2%下落となった。消費低迷、物価下落という報道が相次げば、人々の物価観をさらに冷やす可能性も否定できない。

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