「カーリース」「カーシェア」「車の管理アプリ」…裾野を広げるコスモ石油
コスモ石油マーケティング(東京都港区、森山幸二社長、0570・783・280)が自動車関連サービスを拡充している。個人向けカーリースの契約数は3月末で累計7万3634台に達した。石油元売り系列では突出した実績だ。個人向けカーリース業界では一定の地位を築いている。2019年に新サービスとしてスマートフォン向けアプリケーション(応用ソフト)の提供を開始。車検の自動見積もりなど顧客の支持を集めている。
【新しい乗り方】
カーリースはリース料金に税金、事務手数料などが含まれており、保険料も含ませることができる。契約者は頭金や車検などの一時的な出費をせずに月々の定額料金で利用できるため、新しい車の乗り方として利用者が増えている。コスモは個人向けカーリースが今ほど認知されていない11年に参入した。
「サービスステーション(SS)の売り上げはいずれ細る。ガソリンだけでは駄目だと危機感があった」と、コスモ石油マーケティングの石本耕二取締役執行役員はカーリース参入の背景を語る。ガソリンの販売だけでなく、「車のプロにならなければならない」(石本取締役)との思いから、SSへの指導は「相当な苦労やエネルギーを費やしてきた」(同)と振り返る。
【全メーカー対応】
今ではSSの店頭に立つ従業員が商談を行い、顧客の生活スタイルなどに合った車選びを助言する。全メーカーの中から車選び提案ができる点が強みだ。また、3年前からSS向け講習も始めた。模擬商談の地方・全国大会も定期的に開くなど人材の底上げに努めている。カーリースを取り扱うSSは851店舗(3月末時点)で、コスモSSの全店舗2755店舗(同)に対し、まだ増やす余地はある。
車関連サービスを側面から支えるのが、19年に提供を始めたアプリ「カーライフスクエアアプリ」だ。会員は給油の割引きクーポンをもらえるほか、給油のタイミングも知らされる。3月末のダウンロード数は192万件と目標を上回るペースで増えている。一番の特徴は車検の自動見積もり機能で、実際に車を点検してもらわずに見積もりから車検の予約、決済までできる。
SSは点検したにもかかわらず、顧客が車検の見積もりに難色を示し成約を逃すことが避けられる。一方、利用者も車検の費用をコミットしてもらうことで安心感がある。自動見積もりの算出は「コスモ・ザ・カード」会員の車両データや車検履歴などのデータベースを基にしている。十数年間の蓄積したデータがあればこそ可能な自動見積もりであり、他社にない武器だ。
【カーシェア実証】
今後、車関連サービスは「あらゆる可能性を模索し、いろいろなことにトライする」(石本取締役)。コスモ石油マーケティングは6月に東京電力HDと中部電力が共同出資するイーモビリティパワー(東京都港区)と提携した。これを機に全国のコスモSSに電気自動車(EV)向けの急速充電器を順次設置していく。すでにカーシェアリングの実証を始めたほか、EVリースも検討している。(編集委員・川口哲郎)