ソフトバンク“もう一つの5G”、「自動車の避難誘導」という切り札
ソフトバンクとワイヤレス・シティ・プランニング(東京都港区)、日本信号は3月、第5世代通信(5G)や人工知能(AI)を活用して道路の交差点の危険情報を遠隔運転車両へ提供する実証実験を行った。災害発生時の迅速・安全な避難誘導の実現に向けた取り組みだ。
災害時には運転手が焦ってしまうことで、車両に絡む事故が起きやすくなる可能性が考えられる。道路上の危険をあらかじめ察知できれば、事故の未然防止につながる。
ソフトバンクは将来、自動運転が普及した際には、交差点の情報を高速・大容量かつ超低遅延で車両に伝える必要があるとも認識。こうした用途における5Gの有効性を検証した。
実験では、交差点の監視カメラから約500メートル離れた場所にあるサーバーへ4K画像を伝送。伝送時は5Gの高速大容量通信が生かされた。サーバー側ではAI処理で画像を解析し、危険情報を発出。遠隔運転車両に対する危険情報の通知は0・1秒以下で行えた。端末の近くにデータ処理機能を配備することにより、通信の最適化や低遅延が実現しやすくなる。
一方、問題点も浮かび上がった。ソフトバンク先端コネクテッド推進部の吉野仁担当部長は、特定の通信会社のサービスに対応した車両しか使えないような仕組みになってしまう場合、実用化は難しいと指摘。「異なる通信事業者に属する端末間で、公平かつ低遅延に危険情報や車両停止信号を伝送できることが課題」とした。
吉野担当部長は、自動運転車が交差点の危険を察知した際にすぐに止まるためには、AI処理の改善も必要とみている。例えば「遅延の抑制や、高信頼化が重要」。ただし高い信頼性を追求すると、処理に時間がかかりがちであるため「誤認識や誤判定を補正・復旧する技術の確立も課題」という。
通信会社には、品質の高い通信網の構築・運用が求められる。ただ、それだけでは複雑な社会課題は解決しにくい場合もある。AIをはじめとする通信以外の技術との相乗効果を高められるかが問われる。
(取材・斎藤弘和)