人手不足が深刻化する建設業界の解決策は?5Gに期待かかる建機の遠隔操作

  • 1
  • 3
コマツが実用化を目指す無人の油圧ショベルとクローラー式ダンプ

人と巨大な建設機械が近距離で共存する建設現場や鉱山開発現場では安全性の向上という課題が常に付きまとう。さらに昨今では、労働力不足が喫緊の課題となっている。これらを解決する近道の一つが、なるべく人を介さない現場を作り出すこと。そこで建機メーカー各社が進めるのが、遠隔操作などを含めた建機の無人化だ。その実現のために必要な技術が情報通信技術(ICT)。中でも第5世代通信(5G)は期待される存在だ。

見えない場所から操作

【遠隔でもリアルな現場感覚】

建機は走行するだけでなく複雑な作業が多い。そこで各社は機械の特性や利用シーンに合わせて、遠隔操作や部分的な自動化、そして完全自動化といった具合で開発に着手する。完全自動化・無人化は、実証を行っている段階だ。

今、実現に向けて各社が最も力を入れるのが、本当の意味での遠隔操作。本社や各支店の事務所など現場が全く見えない遠隔地で建機を操作できるようにする。今のところ実用化されているのはラジコンカーのようなイメージで、現場から比較的に近い、機械が見える範囲での操作にとどまる。

走行だけでなく複雑な動きをする建機は大量のデータのやりとりが必要となってくる。そこで高速・大容量・低遅延の5Gの特性が生かされそうだ。

各社が利用を検討する中、コマツはいち早くNTTドコモと5Gを使った実証をしている。コマツのICT建機と遠隔操作システムを5Gに接続。建機に搭載した複数のカメラで撮影した現場の映像と建機への制御信号を双方向でリアルタイムに送信するという実証を行っている。

現場の映像や必要なデータの送信が遅れると、現場で必要な動作と遠隔地の操作に時間差ができてしまい、生産性の低下につながる。5Gの特性でこの問題を解消し、遠隔地でもリアルタイムに把握しながら、正確で効率的な現場施工と管理が可能となる。

日立建機やコベルコ建機もベンチャーや教育機関などと連携し、5Gの研究に取り組む。各社が焦点としているのは「いかに現場で作業している感覚で操作ができるか」(コベルコ建機)ということだ。今後、音や操縦席の振動などといった現場の状況をどのようにフィードバックするかが課題となる。

日立建機の無人運行システム用ダンプトラック

100台協調「完全自動」

【収集データ活用探る】

完全無人化といえば、コマツが2008年に投入した「無人ダンプトラック運行システム(AHS)」。過酷な環境である鉱山現場の安全や生産性を向上するため、独自の技術を駆使し完全無人稼働を実現した。

さらに同社は、より実際の作業に近付けるために、完全無人の油圧ショベルやクローラー式ダンプの実証を続けている。人工知能(AI)を活用した画像分析機能や地形の計測技術を搭載した油圧ショベルを、ダンプと協調して稼働できるようにした。

油圧ショベルには地形の計測センサーを搭載し、掘削動作を最適化。現場の画像分析を基にダンプの荷台の位置も正確に割り出して土砂を投入できる。米エヌビディアの画像処理半導体(GPU)を油圧ショベルの自律運転に活用する。

日立建機は、アスファルト舗装の仕上げなど、地面を押し固める転圧作業を行う道路機械である「タイヤローラ」の自動運転試験を実証中だ。タブレット端末で転圧の領域と走行経路を設定し転圧を開始、レーンチェンジも自動で行う。進捗(しんちょく)管理はタブレット上で確認できる。そのほか、ミニショベルの自動掘削積み込み試験なども行っている。

そして、満を持してAHSを20年前半に商用化する。日立製作所の鉄道車両の技術と子会社のカナダのウェンコ・インターナショナル・マイニング・システムズ(ブリティッシュコロンビア州)の鉱山運行管理システムや配車システムを組み合わせた。中でも他社との違いとしては、日立の鉄道閉塞(へいそく)管理方式により1台当たりの通信量を抑えて必要なデータだけを取り込んで100台規模で稼働できる。先行する他社のAHSは10台規模だという。今後はショベルの自動化にも挑戦する。

また、ICT建機が5Gとつながることで収集できるデータの量が格段に上がる。それらのデータを活用した新製品や新サービスの創出も各社、視野に入れている。建機に各種データを学習させ、建機自体が現場の危険を判断したり、適切な作業を決めるためのアプリケーションなどの実用化が期待される。

KEYWORD ICT建機

マシンコントロール(MC)/マシンガイダンス(MG)システムを搭載した建機。MCは施工機械の作業装置を自動制御する。MGはオペレーターに操作ガイドを表示する。建機に取り込んだ3次元(3D)設計データと衛星測位システム(GNSS)などによる位置情報を組み合わせて作業機操作を支援する。
 国土交通省が提案する取り組み「アイ・コンストラクション」にも準拠する。同取り組みは測量から設計、施工、検査、維持管理に至る全ての事業プロセスでICTを活用し、効率的で、魅力ある建設現場を目指すというものだ。

DATA 建設技術者/30年に9万人不足

ヒューマンタッチ総研によると日本経済が順調に成長した場合、2030年には建設技術者の不足が9万4157人にまで拡大する見通しであることが分かった。

30年までの需給動向について未来予測を行い、足元の潜在成長率並みの低成長率で推移した場合の「ベースライン成長シナリオ」、政策効果が発現し高成長を実現した場合の「成長実現シナリオ」、物価上昇率が0%前後で推移する「ゼロ成長シナリオ」の三つのシナリオにおける人材需給ギャップを試算した。

ベースライン成長シナリオは、15年に4万9370人だった建設技術者の不足が、25年に5万7633人、2030年には6万304人にまで拡大すると試算した。成長実現シナリオでは、15年に4万9370人の不足を25年で7万1073人、30年には9万4157人と試算した。ゼロ成長シナリオでは15年に4万9370人の不足が、25年に4万6020人、30年には2万6680人となった。

建設現場での労働力不足は建設業界にとって今後も大きな課題となる。ヒューマンタッチ総研では「建設技術者の需要が増加して人手不足が30年まで続くという試算結果となった。人材確保への努力だけなくアイ・コンストラクションへの積極的な対応などで生産性向上への取り組みが必要だ」としている。

日刊工業新聞2020年5月1日

関連する記事はこちら

特集