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ローソン「住宅街店舗」2割増収のなぜ? 

立地ニーズで商品展開
ローソン「住宅街店舗」2割増収のなぜ? 

店舗入り口前に設置した野菜売り場。主婦や在宅勤務のサラリーマンらの購入につながっている

新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛で、大手コンビニエンスストアの売上高は4、5月と連続して前年同月比約10%減となり、過去最大の落ち込み幅となった。そんな中、独自の取り組みで売り上げを2割もアップしているローソンの店舗がある。「コンビニの経営状況は悪い」と一言で片付けられない事例を追った。

住宅街にあるローソン中野丸山1丁目店(東京都中野区)は、生鮮野菜や和洋菓子など、主婦らが多い立地の需要にあった商品の販売を強化した。これにより5月の売上高は同20%増を達成した。

同店は以前からネギやキュウリなどは少量のみ販売してきた。同店のほかに33店舗を経営する前田宏オーナーは、立地ごとに店舗売上高が激変していることに直面。「外出自粛で、この店舗は野菜や和洋菓子の需要が高い」と早い段階で気付いた。

そこで4月中旬以降、トマトやピーマン、キウイなどの生鮮品を従来より10倍多く発注。店舗入り口付近に専用台を設置し、どの来店客にも目に付く位置で販売を始めた。常温の和洋菓子も10倍以上発注し、ベーカリー横からレジ前に置いた。その結果、近隣に住む主婦や在宅勤務のサラリーマンらの購入につながり、5月の生鮮品売上高は同4・6倍、和洋菓子は同47%増となった。

杉並区内の住宅地にある別の店舗でも同様に売上高を増やした。「生鮮品の発注業者さえ納品可能であれば、同じような取り組みをあと5―6店舗でやりたい」(前田オーナー)と計画する。

生鮮食品や和洋菓子のほか、店内調理の弁当などの充実も売上高を引き上げた。こうなるとミニスーパーマーケットの様相で、他社のコンビニよりスーパーが競合になる。その指摘に対して、前田オーナーは「お客さまが本当に欲しいものを欲しい量だけ置くことが何より大事。それが小売業の基本」と説明。「立地ニーズに合った商品を見極め、充実させていく」考えだ。

これまでコンビニは全国でほぼ同じ店舗内容で拡大してきたが、今後は各店が収益を上げるための策として、それぞれの立地や需要にあった売り場を持つ店舗が増えそうだ。

(取材・丸山美和)
日刊工業新聞2020年6月30日

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