苦境から早期回復する企業の3つの特徴は「財務体力・対外信用力・存在意義」だ

大阪中小企業投資育成・斎藤社長インタビュー

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新型コロナウイルス感染症の影響で、中小企業を取り巻く経営環境は激変している。関西以西の西日本で中小の創業や事業拡大を長年支援してきた大阪中小企業投資育成の斎藤浩社長に、今後の見通しや中小への経営支援について聞いた。

―景況感は。

「自動車産業など、サプライチェーンの裾野が広い産業は生産全体が止まってしまっている状況だ。ただ、こうした供給系の業界は生産が始まれば立ち直りも早い。一方、需要サイドでは生活様式が変わる。どういう構造変化が起こるか注視する必要がある」

―企業の経営戦略はどう変わりますか。

「苦境から早期回復する企業には三つの特徴がある。一つは財務体力。純資産を積み、自己資本比率が高い企業は多少の苦境なら乗り切れる。二つ目は経営権が安定し、対外信用力があること。社歴の長い企業は過去に何度も困難を乗り越え、経験値が高くサプライチェーンの変化への対応力もある。三つ目に存在意義があること。提案力があり、サプライチェーンから外せない存在の企業は供給が回復すれば真っ先に注文をとることができる。新型コロナを機に、企業は経営の質転換が迫られている」

―ほかに注意するべき点は。

「今後はますますIT化が進む。ただITには“余剰”がなくなる危険性もつきまとう。今回のようにサプライチェーンに影響が出たとき、在庫を最小限に抑えてきた企業は無理がきかない。IT化の推進と同時にバッファーを持たせる意識も大切だ」

―今後どのように企業を支援しますか。

「新型コロナショックは企業経営の質があぶり出される“加速度試験機”のようなもの。非常時に慌てずにすむよう、企業へも日頃から健康診断が必要だ。そこで6月末に大阪中小企業診断士会と連携し、希望する企業へ経営相談の機会を無料提供する事業を始める。改善策を押しつけるのではなく、自社の課題への気づきを促す。企業経営者はこういう時期にこそ次の一手を意識する必要がある」

【記者の目】

大阪中小企業投資育成は経営支援と同時に、後継者育成に向けたセミナーや交流会を実施し中小の事業承継を後押しする。「新型コロナで経営者は考える時間が増えた」と斎藤社長。新型コロナを繁忙期に後回ししがちな次世代育成の機会にできれば、長期的な“経営の質”転換のチャンスにつながるのではないだろうか。(大阪・大川藍)

日刊工業新聞2020年6月26日

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