日本公庫が中小の海外子会社に直接融資、ウィズコロナでサプライチェーン強靱化に

1社14億4000万円上限、タイ・ベトナム・香港から

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新型コロナ収束後も持続的に成長できるよう資金面から下支えする(写真はイメージ)

日本政策金融公庫が新型コロナウイルス感染症対策として創設する中小企業向けクロスボーダーローン制度の概要が分かった。中小企業の海外子会社に直接融資する制度で、2021年1月から3カ国・地域で始める。新型コロナの影響で国内の親会社の業績が悪化し、海外子会社に資金供給できずに海外事業が頓挫するリスクが浮上している。新制度で資金調達を円滑化し「ウィズコロナ」時代における中小の海外戦略を後押しする。

日本公庫のクロスボーダーローン制度は、このほど成立した「中小企業成長促進法」で実現。活発化してきた中小企業の海外展開の停滞を防ぎ、新型コロナの収束後でも持続的に成長できるよう資金面から下支えする。

まずタイ、ベトナム、香港で開始する。これらの国・地域は中小の進出状況や現地の法規制を踏まえて選定した。今後、対象国の拡大も検討する。

融資対象は政府から「経営革新計画」「経営力向上計画」「地域経済牽引事業計画」の承認を受けた中小の海外子会社。融資限度額は1社当たり14億4000万円で、通貨は円か米ドルで供給する。原則として融資期間は設備資金が20年以内、運転資金は7年以内で、利息のみ支払う据え置き期間は2年以内。

一般的に親会社を経由して融資する「親子ローン」は親会社の業績が悪化している場合や、海外子会社の事業規模が親会社より大きい場合、調達が困難になる傾向にある。また親会社のバランスシートが肥大化するほか、為替リスクを親子間で背負うことにもなる。

このほか海外の金融機関から調達する方法として、日本の金融機関が信用状を発行し債務を保証する「スタンドバイ・クレジット」がある。ただ進出国の金融政策の事情により信用状があっても貸し渋る場合がある。海外金融機関との交渉体制も必要となり、融資期間も1年程度と長期の資金調達が難しい。

【解説】

日本公庫のクロスボーダーローン制度は中小企業の海外事業を支えるだけでなく、日本のグローバルサプライチェーン(供給網)を維持する上でも極めて有用。中小の海外子会社は現地の日系サプライチェーンに組み込まれることが多く、窮すればその寸断を招きかねない。新制度は中小のレジリエンス(復元力)を高め、産業界を強靱(きょうじん)化する効果を生みそうだ。

中小の海外展開はここ10年で活発化し、海外での資金調達ニーズも増加、多様化している。日本公庫が取引先の海外子会社に調査した結果によると、18年12月時点でクロスボーダーローンを利用したい企業の割合は約7割にのぼるが、そのうち民間金融機関から同ローンで調達できた企業は4%にとどまる。

政府系金融機関では国際協力銀行(JBIC)と商工中金が同ローンを実施している。ただJBICの融資先は大企業や中堅企業が中心で、商工中金も採算性などが優先されている状況だ。また民間でもメガバンクの中小向け同ローンはほぼなく、地域金融機関の実績も限定的とされる。

新型コロナの影響で親会社の業績が悪化すると、海外子会社の資金調達が一段と難しくなる。新制度は従来の海外子会社向け融資ではカバーできない調達ニーズを補完でき、中小にとって円滑な調達が可能になる。また海外事業が持続的に成長し拠点網が増加すれば、特定地域への集中を回避できるメリットもある。

(石井栞)

日刊工業新聞2020年6月19日

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