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見通せない経済…経産省の調査から見えた「弱気」な企業マインド

経済産業省では、毎月初旬にその月と翌月の生産計画を、主要製品の主要企業について調査している。今回は、5月初旬に調査した5月と6月の生産計画の状況と、5月初旬段階での企業のマインド、つまり生産計画や見込みが強気だったのか、弱気だったのかを紹介する。

5月調査の生産計画 前月比マイナス4.1%

5月の生産計画については、前月比マイナス4.1%の低下を見込むという結果になっている。この計画どおりに実際に生産されれば、5月の鉱工業生産は、4か月連続の前月比低下となる。

6月の生産計画は、この5月計画から3.9%の上昇という生産計画になっている。

ただし、今回の調査結果は、5月当初の生産計画に基づくものだが、5月上旬以降も新型コロナウイルス感染症をめぐっては、諸外国でも経済活動再開に向けた動きがみられる一方、我が国でも緊急事態宣言が延長された後、地域ごとに解除の動きが進むなど、情勢は変化している。そうした情勢変化の影響が企業の生産計画に十分には織り込まれているとは考えにくく、また企業も先の見通しを立てることが難しい情勢となっている。そのことに留意して今回の調査結果をみる必要がある。

生産計画の強気と弱気

調査結果から、企業の生産活動に対するマインドをみる場合、生産計画と前年実績の水準を比較すると、この生産計画がどの程度、強気なのか弱気なのかの一つの目安となる。

5月の生産計画は、前年同月実績比マイナス23.6%と4か月連続の低下となった。マイナス23.6%は今基準内最大の低下幅となり、非常に弱気となっている様子がみられる。前月4月調査と比べても、企業の生産マインドに対する新型コロナウイルス感染症の影響は、急速に拡大したことがうかがえる。

また、生産予測調査は、その調査月と翌月の生産計画を調べていることから、同じ月の生産計画を2回調べる仕組みになっている。調査月の生産計画が、前回調査の生産計画からどのくらい変動したのかを予測修正率という。

5月の予測修正率はマイナス12.9%と大幅なマイナスとなり、8か月連続で下方修正されている。予測修正率のマイナス12.9%は、先月の今基準内最大の低下幅マイナス7.1%をさらに更新する低下幅となった。基準年が異なるため単純な比較はできないものの、リーマンショック当時最大の予測修正率がマイナス12.1%(2009年1月調査)、東日本大震災当時のマイナス15.9%(2011年4月調査)であることからみても、5月の予測修正率は大幅な低下となっている。

このように予測修正率からも、5月は弱気が急速に進んだことがうかがえる。なお、この予測修正率の大幅な低下には、新型コロナウイルス感染症の影響が急速に拡大したため、前月4月調査の時点では、企業は生産への影響を十分見通せていなかったことも要因として考えられる。

各社品目ごとに生産計画を上方修正した数と下方修正した数を比較して、その比率の差分を計算した指標を「アニマルスピリッツ指標」と呼んでおり、企業の生産計画の強気、弱気の度合いを推し量る指標として活用している。

5月調査結果では、4月のマイナス17.9からさらに大幅に低下し、アニマルスピリッツ指標はマイナス31.4となった。基準年は異なるがリーマンショック当時のアニマルスピリッツ指標がマイナス35.9(2009年1月調査)であったことからみても、5月の指標は非常に低い水準まで低下している。

この指標の推移とこれまでの景気循環を重ねると、おおむねマイナス5を下回ると景気後退局面入りしている可能性が高いという傾向がみられている。アニマルスピリッツ指標は7か月連続でマイナス5を下回り、月々の上下動をならしたトレンドでみてもマイナス5を大きく下回る傾向がみられるなど、生産マインドにかなり弱さがみられる。

5月調査の内訳をみると、強気の割合が16.6%、弱気の割合が48.0%となっている。特に弱気の割合が大きく増加し、高い割合となった。

5月の調査結果では、前年同月実績比や予測修正率、アニマルスピリッツ指標から生産マインドは弱気が急速に進んだことがうかがえる結果となった。

なお、冒頭で述べたように今回の調査結果には、新型コロナウイルス感染症をめぐる情勢変化の影響が企業の生産計画に十分には織り込まれているとは考えにくく、また企業も先の見通しを立てることが難しい情勢となっている。そのため、今後も、例年の傾向以上に生産実績や生産計画が変動する可能性もあることから、生産の先行きや企業のマインドに関しては、引き続き注意深くみていく必要がある。

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