トヨタが初採用した関西ペイントの材料が“電池の道”を作った!

カーボンの導電パス(道)が性能向上のカギに

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関西ペイントの材料が採用されたトヨタの「ヤリス」

関西ペイントの新開発のリチウムイオン電池(LIB)用導電カーボンペーストがトヨタ自動車の新型車「ヤリス」のハイブリッド車(HV)用電池に採用された。LIBの正極膜を構成する材料で、関ペでは初の実用化となる。「ヤリス」は国内で「ヴィッツ」として知られるトヨタの主力小型車で、全面改良した新モデルを改称し、2月に市場投入された。関ぺにとっては新材料の採用第1号がトヨタの戦略車という快挙になった。

関ペは導電カーボンペーストについて、主力の塗料とは別の新規事業として取り組んできた。現在、名古屋事業所(愛知県みよし市)で量産しており、需要に応じて小野事業所(兵庫県小野市)でも生産を始める。2030年度に売上高25億円を目標としている。

車載LIBの正極膜は、リチウムイオンを出し入れするマンガン系やニッケル系などの活物質と、電子の伝導を助けるカーボンなどを混ぜたものを基材に塗布する。「カーボンがパス(道)を作るように分散しなければならず、分散しすぎてもいけない」(檜原篤尚R&D本部基礎研究所所長)といい、カーボンのつながりが電池性能に大きく影響する。

従来、正極膜の材料は電池メーカーがカーボン粉末と活物質、溶媒などを一括して混ぜるのが一般的だった。これに対し関ペは今回、カーボンを溶媒とあらかじめ混ぜておき、最適な分散状態のペーストにして電池メーカーに供給する方法を採用した。これが、適度な導電パスを持つ正極膜を作り、電池性能の向上に貢献した。

工場でも、異物混入を嫌う電池向けに、塗料よりも厳しい品質管理手法を取り入れたほか、より高性能の異物混入分析装置などを導入。クリーン度の高い、塗料用とは別の新しい生産設備を構築した。「ヤリスは生産計画台数が大きいため、塗料メーカーの量産力も評価された」(檜原所長)としている。

今後、電池性能とカーボン分散状態の関係をさらに研究し、ペーストの用途をHV用電池から電気自動車(EV)用にも広げていく方針。駆動用のほか、始動用の電池にも展開できると見ている。次世代の車載電池として期待される全固体電池でも、「カーボンが電気を運ぶ役割を担うため、分散技術は同じく重要な課題になる」(同)とし、技術動向を注視しつつ材料開発を進める。

これまで関ペはヤリス向けペーストの開発と量産に集中してきたため、他社への提案は「大々的には行ってこなかった」(同)。しかし、今後は他社向けの提案も積極化するとみられる。それぞれの顧客が目指す電池の特性や、使用する活物質に合わせた導電カーボンをカスタマイズし、提案する考え。国内に加えて、海外からの引き合いが増えれば海外生産も検討する構えだ。

日刊工業新聞2020年5月28日

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