三菱電機がシャープから半導体工場取得、電機業界「新常態」のM&Aへ
三菱電機はシャープから土地と建物を取得して広島県福山市にパワー半導体工場を新設する。投資額は今後の設備導入費も含めて約200億円で、生産能力は全体で現状比2倍に拡大する。2021年11月の稼働開始を予定。
シャープからの取得で合意したパワー半導体の新工場は延べ床面積が約4万6500平方メートルの3階建て。製造の前工程であるウエハープロセス工程を担当する。
三菱電機のパワー半導体生産体制は主力のパワーデバイス製作所(福岡市西区)に加えて、熊本県合志市などにも拠点を構える。シャープから取得する拠点もパワーデバイス製作所の新たな工場という位置づけだ。
電力を効率良く制御するパワー半導体は今後の自動車の電動化に伴って需要が増加していく見通しだ。
シャープの福山事業所では、半導体などを製造してきた。ただ、親会社の台湾・鴻海精密工業が主導する事業構造改革の一環として国内工場の統廃合・売却を進めており、今回の三菱電機への一部建屋売却も、その戦略に沿った動きだ。
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電機大手8社の2021年3月期は、連結業績予想を開示した4社のうち3社が営業減益を見通す。新型コロナウイルス感染拡大の影響が年間通して足を引っ張るものの、08年のリーマン・ショック時のような赤字転落は免れる。この10年の事業構造改革により各社の収益体質は確実に強化された。今後必要なのは、ニューノーマル(新常態)時代に合わせた成長戦略の再構築だ。
東芝は21年3月期連結業績予想(米国会計基準)の営業利益が前期比15・7%減の1100億円になる見込み。半導体事業などへの新型コロナ影響が900億円の減益要因となる。構造改革費用の200億円も利益を圧迫する。同社は21年3月期から売上高営業利益率5%の事業撤退基準「5%ルール」を新たに導入する。その基準を下回る火力発電新設事業で海外工場の人員を3割削減しシステムLSI事業でも追加の構造改革を準備する。
「インフラサービスカンパニー」への変革が成長戦略の中心だ。20年3月期からの5年間で計数千億円のM&A(合併・買収)を狙う。毎年複数の小規模案件を実行し、機器の保守・更新・運用受託などのインフラサービス事業を拡大する。
日立製作所も社会イノベーション事業を軸に変革する。非中核の上場子会社売却を進めつつ、IoT(モノのインターネット)共通基盤「ルマーダ」中心の成長を目指す。構造改革の優等生だった三菱電機はスリム化し過ぎた反省から、M&Aなどを駆使して事業群の裾野を広げる方針。
ソニーは21年4月に「ソニーグループ」へ社名変更する。名実ともにエレクトロニクス会社からの脱却を図り、新常態時代の荒波を乗り越える。