創薬・医療ベンチャーを生み続ける東京のエコシステム、場作りのキーマンに聞く
東京都は、創薬・医療系ベンチャーを育成、支援するプログラム「Blockbuster TOKYO(ブロックバスタートーキョー)」を実施している。委託を受けて同プログラムを企画・運営するのはBeyond Next Ventures(東京都中央区)だ。同社は「シーズの実用化」をミッションに掲げ、資金援助をはじめさまざまな支援を手がける。創薬ベンチャー業界を中心にキーパーソンになりつつある、伊藤毅社長に話を聞いた。
―ブロックバスタートーキョーの特徴を教えてください。
「創薬・医療系ベンチャーの経営を目指すチームに、必要なリソースを提供する。各チームにメンターをつけ、資金調達から事業化まで経営に足りない部分を補強する。2019年度は19チームが参加中。セミナーなどを受講できる研修プログラムも用意している」
―支援期間はどのくらいで、各チームはどんなことをしますか。
「11カ月でビジネスプランを作り、発表会で英語で発表する。創薬・医療系ベンチャーの経営には、製薬会社や投資家に興味をもってもらうプレゼンテーションも重要。しっかり練習してもらう」
―社内では「BRAVE」というベンチャー支援プログラムを実施しています。支援事業を手がけるようになったきっかけは。
「ベンチャーキャピタルで働き、意欲的な人材や技術の種が埋もれていると実感したからだ。資金援助だけでなく、投資前から経営に介入して引っ張り上げたいと考えた」
―技術を実用化するには、どんな障壁がありますか。
「学術資料をわかりやすく作り替えるのが最初の課題だ。画期的な技術も投資家に面白いと思ってもらえなければ始まらない。当社はこの“翻訳”をお手伝いする。また大学の先生や研究者は経営に向かないことも多い。経営者候補とのマッチングも実施している」
―支援する上で大事にしていることは。
「各企業の資金調達力を上げることだ。資金が潤えば給料が出せ、優秀な人材も集まる。的確な支援を確立し、支援のエコシステムを作りたい」
【記者の目/場作りは大きな意味もつ】
若手社員の需要が高い日本社会では、博士課程まで取得した研究者の活用が課題とされている。経営を任せられる人に研究者が出会えれば、起業という形で知識や技術を生かせる。場作りは大きな意味をもつ。また近年は、大学だけでなく“企業発”ベンチャーも増えつつある。同社の取り組みは今後、さらに注目を集めそうだ。(門脇花梨)
日刊工業新聞2019年12月10日
『Blockbuster TOKYO』選抜プログラム参加者募集
東京都は今年度も創薬・医療系ベンチャーを育成、支援するプログラム、『Blockbuster TOKYO』を実施する。プログラムは、創薬・医療系ベンチャー等の企業や成長のために必要な基礎知識を身に付けることができるセミナー・勉強会をメインとする『研修プログラム』と、専門家による指導・助言や、事業会社や投資家等とのマッチングなど、より実践的・具体的な支援を行う『選抜プログラム』により構成される。プログラム実施期間は令和2年8月下旬から令和3年3月まで。
この度は『選抜プログラム』の参加者を募集する。応募期間は令和2年7月17日(金曜日)まで。なお、『研修プログラム』は令和2年6月より開始しており、随時受付中。
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