「社長塾」「経営者育成プログラム」…製薬業界、次世代リーダー育成急ぐ

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大日本住友製薬は、組織やプロジェクトの枠を超え、自由闊達な研究活動を促している

製薬業界で次世代の経営を担うリーダー育成が活発化している。国内では薬価抑制や人口減少が逆風となる。一方、核酸医薬や遺伝子治療といった新たなモダリティ(創薬手法)への対応や、デジタル技術を用いた治療法開発などに注目が集まる。変革期において迅速かつ柔軟な意思決定が求められる中、各社の人材力が試される。(取材=大阪・中野恵美子)

【社長の肝いり】

塩野義製薬は手代木功社長肝いりの「社長塾」を通じ、各部門長が選定した40代前後の人材を対象に経営トレーニングを実施してきた。だた「座学のみでは経営感覚は磨かれない」と手代木社長。社長塾とは別に、経理や財務を担当する30代の若手従業員について、国内11グループ会社の社外取締役や監査役に置く。

「社外の視点から執行の暴走を防ぐ役割を若いうちから学んでほしい」と狙いを説く。経営に貢献する発言の有無など取締役会の議事録も取り、意欲向上につなげる。塩野義製薬本体の社外取締役が、グループの社外取締役に就く若手人材を教育する機会も充実させる。「次のポストで経営トレーニングがどう生きるか検証したい」と見据える。

【関連部門が支援】

新薬の創出を加速するため、研究開発体制をてこ入れしたのは大日本住友製薬だ。17年10月、創薬テーマを推進する「プロジェクト制」を採用した。テーマ発案者はプロジェクトリーダーとして予算執行権や人事評価権を持つ。テーマ化から、薬になる可能性が見えるリード化合物の創出、臨床に至るまで関連部門は全面的にサポートする仕組みだ。

中には20代の若手リーダーもいる。野村博社長は「ベンチャーの社長のような責任感を持ち、次世代の経営者の育成につなげたい」と期待を込める。組織やプロジェクトの枠を超え、自由闊達(かったつ)な研究活動を促すことで成果も見えてきた。例年、1―4件の開発候補品が創出されるが、20年度は11件と増加を見込んでいる。

【5―10年かける】

「経営人材はストックとして5―10年かけて育てなければならない」と説くのは田辺三菱製薬の三津家正之社長だ。30代の若手リーダーを中心とした「経営者早期育成プログラム」をはじめ、年代や役職ごとに人材を選抜し教育する。また国内外の拠点で多様なポストを経験させることで個人が専門性を発揮できる機会をつくってきた。教育と実務を通じて全社的視点を養う。

3月、三菱ケミカルホールディングス(HD)の完全子会社となったのを機に「HDとも“他流試合”を活性化し、共通プログラムで多業種との接触を増やしたい」と展望を描く。

日刊工業新聞2020年3月31日

キーワード
製薬業界 人材育成

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