IT人材不足救うベトナム企業。東遊運動の歴史から一転、日本が学ぶべき時代に?

日本語能力武器に成長

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IDEAグループのホーチミン本社の設計センター

日本が世界に誇った製造業パワーが急激に失われ、モノ作りを支える屋台骨であるソフト開発も日本のIT人材不足からベトナムに頼らざるを得ない状況が進んでいる。ベトナム最大のIT企業として日本にも進出しているFPTコーポレーション(ハノイ市)では2020年3月に日本の経団連にも加入したが、海外収益の半分以上を日本で稼ぎ、同社の日本法人には1500人もの日本語が堪能なベトナム人エンジニアが在籍して日本企業からの受託ソフト開発を担っている。

FPTのほかにも日本語能力の高さを武器に日系大手をメーンの顧客として急成長を続ける純ベトナム企業がIDEAグループ。チュン最高経営責任者(CEO)はホーチミン工科大学卒後、日本留学などを経て10年に日本の大手企業向けに「部品図」製作で成功した。その後は、設計にとどまらず高精度部品やAGV(自動運送ロボット)、6軸ロボットの開発製造も開始し日本企業に納入するなど経営多角化にも成功した。「部品図」とは一つずつの部品を製造する際に不可欠なもので、組み立て図から「部品バラシ」作業で「部品図」を作る部署には90人が従事している。

IDEAグループはこれまでに従業員340人を抱え、平均年齢26歳の若い設計者も252人いるベトナム最大のCAD(コンピューター支援設計)企業。これだけの数の設計者を抱えているので顧客の短納期要望にも応えることができる。日本の相場の半額ほどの低コストで受注しており、品質や納期を厳守している。製品開発、精密部品加工などについても機密情報管理やセキュリティー重視のサービスを提供している。

IDEAグループではこれまでに約180社の顧客を抱えているが、そのほとんどが日系大手企業。顧客は日本国内が135社、ベトナム国内で日系企業37社、タイや米国に進出している日系企業3社など。

「近くタイに営業とアフターサービスの拠点を作り、22年にはタイで組立工場を稼働させたい」とチュンCEO。タイへのベトナム企業への工場進出は珍しいが、チュンCEOは日本企業が多いチョンブリ県に進出を予定している。

受託ソフト開発で競合するインドなどは英語圏市場をメーンにしているが、最初に紹介したFPTもIDEAグループも超巨大な英語圏に比べればちっぽけな日本語圏向けソフト開発に目を向けた。FPT創業以来会長を務めるチュオン・ザー・ビン氏にベトナムで単独インタビューした時、日本市場に関心を持った理由として、同氏はベトナムでフランス植民地支配から脱するため日本から学んだ明治時代後半の「東遊(ドンズー)運動」の歴史を説明した。現代の日本は親日的なベトナムにこぞって進出、技術移転も図り大学教育などを含むベトナムの人作りにも多大な貢献を続けているが、ベトナムのIT企業の活躍を見ながら、日本がベトナムの勤勉性から学ぶべき時が来たのではないかと感じている次第だ。

(文=アジア・ジャーナリスト 松田健)

日刊工業新聞2020年6月11日

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