車両の健康診断法を変更、コスト削減につなげたいJR東日本

移動需要、減少に拍車

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「JR東日本アプリ」では山手線の車両ごとの混雑状況がほぼリアルタイムで把握できる

【通勤の“密”】

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐには人の移動を減らすことだ―。2月25日に政府が決定した「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」で、テレワークや時差出勤が呼びかけられ、大都市の鉄道利用は減った。4月7日の緊急事態宣言発令を機にその傾向は加速し、一時は従来比7―8割減に。大型連休明けから徐々に戻り始めたが、足元は半分程度と低調なままだ。

感染収束後の環境について、東京メトロの山村明義社長は「テレワークが浸透した社会になるだろう」と予測する。小田急電鉄の端山貴史常務も「通勤客の減少やデジタル消費が進む」と見る。都心への通勤需要に応えてきた都市鉄道は、急激な構造変化に直面することになりそうだ。

【固定費削減】

とはいえ、将来の利用減少は就労人口の動向からも予想できていた。JR東日本は2018年に発表したグループ経営ビジョン「変革2027」で、人口減に加えて働き方の変化が移動需要の減少を加速すると想定。「固定費割合が大きい鉄道事業は、急激に利益が圧迫されるリスクが高い」と警告し、あらゆる業務に“システムチェンジ”を促した。

JR東の深沢祐二社長はコロナ禍への対策として「より柔軟なコスト構造をスピードアップして作っていく」との方針を示す。カギを握る固定費削減策の一つがCBM(状態基準保全)だ。安全・安定輸送と生産性を両立する手法として、東京メトロやJR西日本らも関心を寄せている。

従来のTBM(時間基準保全)では一定期間や走行距離ごとに車両などの部品を交換していた。CBMでは安全性を損なわない故障の兆しを検知して寿命を予測し、リスクの進行を監視しながら、適切な時期に修理する。

【ピーク分散】

一方、都市鉄道の感染リスク軽減は車内混雑緩和が喫緊の課題。列車増発で解決するには時間がかかり、限界もある。企業の理解の下、時差通勤の定着による“ピークシフト”の実現が最も近道だ。

鉄道各社はスマートフォンのアプリケーション(応用ソフト)で混雑状況の可視化に取り組んでいる。利用者が、これを見て行動を選ぶようになれば、需要の平準化も早期に効果が期待できそうだ。

また恒常的に利用時間帯が分散されれば、ラッシュ時のピーク需要に合わせて、駅施設や輸送力を拡充せずに済む。藤原裕久東急取締役は「大きな設備投資が必要なくなりそうだ」と話す。輸送サービスの向上も、ハード重視から、ソフト面の充実にかじを切ることになる。(小林広幸)

日刊工業新聞2020年6月10日

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