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神戸製鋼が「溶接AI」、“職人技”再現へ

神戸製鋼所は造船・エネルギー機器向けに、人工知能(AI)を活用した溶接技術の普及を本格化する。造船現場の初層溶接では、電極などの特徴点を溶融池(溶融金属だまり)画像から抽出する要素技術を確立、このほど基本的な運棒制御機能を自動溶接機に搭載した。貯蔵タンクの溶接では、自動ガスタングステンアーク溶接(GTAW)装置への溶融池センサーの搭載を検討中。自動化が難しい高度な領域で“職人技”の再現を目指す。

神戸製鋼は、AIの学習機能を活用し、視覚センサーを搭載することで溶接条件を自動制御する溶接ロボットを順次投入していく。

照準を当てる造船、エネルギー機器は、中でも高度で複雑な溶接が多い分野とされる。

造船現場では、初層段階の溶接で自動化のネックだったギャップ変動の影響をAIが分析し、運棒を制御できるようにした。自動溶接機の試作品として、顧客の評価を得つつ必要な機能を拡充する。

一般的な突き合わせ溶接は自動化が進みつつあるが、初層溶接は通常、高度な技能を持つ熟練溶接士が溶融だまりを見つつ、速度や運棒方法を調整する必要がある。

一方、貯蔵タンクなどは、これまでの溶接画像の中から融合不良などの溶接欠陥を引き起こす現象を検知し、制御を最適化できるようにする。リアルタイムの検知と制御を可能にするため、自動GTAW装置に溶融池センサーを搭載する計画。

同社は溶接ロボットや材料を含む溶接ソリューションを得意としており、AI活用の溶接自動化技術は溶接学会で17年に初めて対外発表した。総溶接時間の削減や省人化など能率面、トレーサビリティー(履歴管理)など品質面の双方で優位性を顧客に訴求する。

新型コロナウイルスの感染拡大で「国際ウエルディングショー」などの展示会は中止となったが、ウェブを通じて自動化、高品質化の提案を進めていく。

日刊工業新聞2020年6月5日

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