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【新型コロナ】リーマン・ショック後以来の休業も…素材産業に暗い影

【新型コロナ】リーマン・ショック後以来の休業も…素材産業に暗い影

生産調整が続く完成車メーカー。通常の生産体制に戻るのはいつか…(イメージ)

新型コロナウイルスの感染拡大が、素材産業にも暗い影を落とし始めた。鉄鋼各社は減産や従業員を一時的に休ませる「一時帰休」の検討に入った。3月の日銀短観では、先行きの業況判断指数(DI)は大企業の鉄鋼がマイナス30、非鉄金属がマイナス29、化学がマイナス7と軒並みマイナスだった。主要顧客の自動車業界が工場休止を打ち出し、「景気を一気に下押しするリスクが高まる」(日本鉱業協会の宮川尚久会長)中、今後の影響を探った。(取材=編集委員・山中久仁昭、梶原洵子、江上佑美子、山下絵梨)

【販売、減速続く】

「関係者の努力もあって、受注残がはけてきたところだったのに」と天を仰ぐのは、浦安鉄鋼団地協同組合(千葉県浦安市)の湊義明理事長だ。ここ約1年半、米中貿易摩擦や中国経済低迷の影響で鋼材販売数量が約2割減ったが、新型コロナで「減速が続き、さらに1―2割落ちるのだろうか」と思案する。

経済活動が低迷すれば、需要家は生産調整と材料の発注抑制に動かざるを得ない。自動車メーカーの工場休止などで、鋼材の需要は減少する。このため日本製鉄は従業員約3万人を一時的に休ませる「一時帰休」の実施を労働組合と協議中。リーマン・ショック後の2009年以来11年ぶりで、月2日程度の休業を想定する。神戸製鋼所も一時帰休を視野に入れ、需要を見極めているところだ。

次世代自動車や第5世代通信(5G)の進展で好調だった非鉄金属業界もコロナショックで一転、暗雲が垂れ込めている。ただ非鉄大手8社がまとめた4―9月期の地金生産計画は銅を6社で増産するが、新型コロナの影響は織り込んでいない。

日本アルミニウム協会は予定していた2020年度の需要見通しの公表を見送った。そもそも前提としていた東京五輪・パラリンピック開催が1年延長され、先行きが見通せない。同協会の石原美幸会長は目下「大きな影響は出ていない」とするが、「さまざまな分野で4―6月期に響いてくる」と危惧する。

【時間差で影響】

石油化学工業協会によると、多様な石化素材の出発材料であるエチレンの国内生産は、2月時点で平均プラント稼働率94・9%。比較的高水準だったものの、新型コロナの影響は時間差で表れるとみられる。もともと米中貿易摩擦で下降局面だったところに、主要な最終製品である自動車の生産休止となった。

ポリエチレン(PE)などの主要樹脂の国内出荷は2月にも減少が見られた。低密度PEは前年同月比3%減、ポリプロピレンは同6%減。米中経済摩擦と新型コロナの影響が混在しており、国内の経済活動停滞の影響は今後本格化するとみられる。

国内の石化生産は5―6年前の構造改革で、内需に近い生産量となった。好不況に左右されない日用品向けの素材により、ある程度の生産下支えは期待されそうだ。三井化学の橋本修社長は、自動車生産停滞の影響を「現在、マクロの生産台数情報と営業担当者らの収集したミクロ情報を合わせ、分析を急いでいる」と話している。

一方、日本化学繊維協会がまとめた2月の化学繊維生産は前年同月比4・5%減の6万2254トンだった。海外メーカーとの価格競争などでダウントレンドが続く中、新型コロナによる大きな影響はまだ出ていない。

【出荷に影響】

ただ3月以降、小売店の休業や外出自粛、消費者心理の落ち込みで衣料品の売上高減少が、衣料用繊維の出荷に響きそうだ。自動車工場の稼働停止では、シートなどの需要に及ぼす影響が懸念される。

財務省の貿易統計によると、中国からの織物用糸・繊維製品の輸入額は、2月は同53・0%減った。日本で流通するマスクの大半は中国産で、マスク需要が中国で高まった点も影響したと見られる。

【読み切れない】

化学メーカー首脳は新型コロナの影響について「読み切れない」と口をそろえる。日本製鉄子会社で、コールケミカルなどを手がける日鉄ケミカル&マテリアル(東京都中央区)の栄敏治社長は「安定生産とコスト削減で乗り切る」と話す。

別の化学メーカーのトップは「1―3月期の業績はほぼ計画通り」とした上で、「グローバルでのサプライチェーン(供給網)寸断の影響が4月以降、出てくるのではないか」と心配する。

日刊工業新聞2020年4月7日

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