良い気分を売れば景気悪化に耐えられる。テレビでも注目「古着deワクチン」の秘訣
日本リユースシステム(東京都港区)は、不用となった商品を海外で販売している。山田正人社長は「リユース業とは思っていない。“捨てさせない屋”だ」と紹介したかと思えば、「“何屋”と狭めたくない」とも力を込める。さらに「アドベンチャー企業だ。一定のルールの中で、未知なるものを追求している」と、チェンジメーカー(社会変革の担い手)をほうふつとさせる。
簡単に企業像をつかめないが、同社が運営する「古着deワクチン」を知っている人は多い。女性誌やテレビ番組で紹介される機会が増えているからだ。「古着deワクチン」は利用者が1口3300円を支払い、自宅に届いた回収キットに衣類などをつめて送り返す。すると「世界の子どもにワクチンを日本委員会」を通じてポリオワクチンが途上国に寄付され、衣類も途上国で販売される。
価値分かち合う
この仕組みの価値は、子ども支援や資源の有効利用にとどまらない。回収キットの発送で国内の障がい者雇用、衣類の販売で途上国の経済にも役立つ。利用者も不用な衣類を整理することで、社会や環境に貢献できる。すべての関係者が、価値を分かち合える。
会社設立は2005年。「テレビで見たリサイクルショップの社長に会いに行った」(山田社長)ことをきっかけに、中古品の輸出を始めた。順調だったが、08年からの経済危機で在庫を抱えた。途方に暮れていると、募金をする人を見てひらめいた。「人間には良いことをして満足したい気持ちがある。良い気分を売れば、景気悪化にも耐えられる」と考え、「古着deワクチン」を思いついた。
10年のサービス開始時、「時間をかけ、10年後に評価されるようになろう」と決意。社会からの信頼獲得を優先し、ポリオ寄付の実績を積み上げてきた。そして19年末、政府が持続可能な開発目標(SDGs)の優秀な取り組みを表彰する「ジャパンSDGsアワード」を受賞し、評価が定まった。
伝統衣装に再生
BuySell Technologiesと連携し、中古着物をモンゴルの伝統衣装に再生する「お針子事業」も評価が高い。モンゴルの著名人が着用して発信することで、経済や文化にも貢献している。
利益と課題解決が結びついたビジネスを発明する秘訣(ひけつ)はあるのか。山田社長は「お互いの利益を考えている。みんなが楽しいことが、正しいこと」と語る。社会活動家のようだが、自身は「笑売人」という。