過剰設備をぐっと減らす日産、“穴埋め”するのはルノー・三菱自の仲間たち
過剰生産能力見直し
日産自動車は連合を組む仏ルノーや三菱自動車との協業を深化する。日産の工場で仏ルノーの車両を生産するなど拠点の相互利用の拡大を検討する。日産は販売台数を大幅に上回る生産能力が収益を圧迫しており、カルロス・ゴーン前会長の下で進めたシェア拡大路線の見直しを急ぐ。生産量を増やして工場の稼働率を高めるほか、ルノーの事業基盤が厚い欧州では工場の閉鎖を含めた事業の効率化なども検討する。
新型コロナウイルスの感染拡大で不透明感が強まるなか、「過剰設備をぐっと減らすことを考えている」。日産関係者は現在検討する2022年度までの中期経営計画の方向性をこう説明する。
日産の19年度の世界販売台数は前年度比約1割減の493万台だった。年度当初は554万台を見込んでいたが、米欧での販売不振などで2回の下方修正を実施。新型コロナの影響もあり7年ぶりに500万台を割り込んだ。一方、世界の生産能力は18年度時点で年約720万台あり、業績の立て直しには製造と販売のギャップを早期に埋めることが不可欠となっている。
日産が製販のギャップの解消に向け検討するのが3社間での工場の活用だ。海外では日産が英国の工場でルノーのスポーツ多目的車(SUV)2車種を生産し、日産がスペインで手がける商用車の生産をルノーの仏工場に移管することを検討しているとの報道もある。東南アジアでは日産がインドネシアで車両生産の撤退を予定する一方、三菱自の加藤隆雄最高経営責任者(CEO)は同社のフィリピンの工場で「日産車の生産ができないか考えている」という。
3社はこれまでルノーの仏工場で日産の小型車を、三菱自のインドネシアの工場で日産の多目的車(MPV)を生産。三菱自はルノーの車台をベースにした商用バンを同社の仏工場から調達し、7月に豪州で販売を予定するなど協業を進めてきた。日産は3社の強みを生かせる形で協業を拡大し、各国で工場の稼働率を引き上げたい模様だ。
一方、日産はスペインの工場の撤退を含めた段階的な縮小も検討する。商用車などを生産する同工場の生産能力は年数十万台規模とされるが、19年度の生産実績は同約4割減の約5万5000台に留まった。欧州に複数の生産拠点を展開するルノーの事業基盤も活用しながら、過剰な生産能力を見直すことになりそうだ。
日産は異業種を含め競争が激化するCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)などの開発の効率化も検討する。これまでも日産の運転支援技術を三菱自の軽自動車に搭載するなど協業を推進してきた。日産関係者は「同じ開発を3社がやるのではなく、強みを鮮明にしてシェアする取り組みを明確化していく」との見通しを示す。
3社は5月27日に今後の連携方針に関する記者会見を予定する。技術や展開地域などで各社の強みを明確にして投資を集中し、グループの力を活用しながら重複する事業の選択を進め、競争力を引き上げる取り組みなどが示されるとみられる。日産は28日に20年3月期決算と3社の連携方針も踏まえた新たな中計の公表を予定する。新型コロナで需要が急減するなか、構造改革にどこまで踏み込むかが注目される。
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