コロナ禍の苦境だからこそSDGsを磨く、老舗の印刷中小企業がチャンスと捉える理由

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学生と中小企業トップが対話するオンラインイベントを開催(正面が大川印刷の大川社長)

新型コロナウイルスの大流行に負けずに、社会に貢献する企業が増えている。不足するマスクや消毒液を提供したり、医療従事者を支援したりと、本業を通じた貢献活動も目立つ。政府が持続可能な開発目標(SDGs)の優れた活動を表彰する「ジャパンSDGsアワード」を2018年に受賞した大川印刷(横浜市戸塚区)は、中小企業の強みを発揮した活動を展開中だ。

大川印刷は3月末、自宅で過ごす子ども向けに塗り絵と切り絵を提供した。切り絵作家の蒼山日菜さんが絵柄を担当し、同社が印刷し、生活協同組合のユーコープ(横浜市中区)が店舗で配布した。

ユーコープの店頭で配布した切り絵・塗り絵

大川印刷の大川哲郎社長が愛知県の印刷会社有志が塗り絵を制作した情報を知り、自社も取り組もうと思った。地元の横浜市に提案すると歓迎され、終業式までに用意してほしいと頼まれた。しかし市内の小学校全校分を準備する時間がなく、市と相談してユーコープの店舗で2200枚を配布した。

大川社長は「トントン拍子で進んだ。普段からの地域パートナーシップが生きた」と振り返る。同社は市民団体などと協力して外国人向けの薬手帳を開発したり、市の温暖化対策事業に参加したりしている。これまでの地域課題解決の経験が発揮され、スムーズに協業できた。

市に相談したことで要望も聞けた。当初、切り絵だけのつもりだったが、教育委員会から「特別支援学校に通う子もいるので、塗り絵もほしい」と提案され、塗り絵も企画した。企業だけだと気づかないニーズだ。

企業が貢献できると思っても、支援される側は必要性を感じていないことがある。中小企業ほど行政や非営利団体との連携で本当の課題を知り、ミスマッチを防げる。ニーズに応えると地域で評価が高まり、新規受注のチャンスが生まれる。

大川印刷は普段からも本業でできる社会貢献を考えている。在宅勤務の今も毎朝、社員が問題意識を共有し「営業自粛で困っている飲食店にできること」や「コロナ収束後にできること」を議論している。

4月末には新入社員の発案で、中小企業の社長が学生と対話するオンラインイベントを開いた。感染予防で就職活動ができない学生に、SDGsを実践する中小企業を知ってもらう企画だ。

学生からコロナの影響を質問された大川社長は「どの企業もコロナの影響を受けている。危機感を持ったことでSDGsにも強みを生かせる」と回答。参加した三承工業(岐阜市)の西岡徹人社長は「自社だけが生き残れば良いのではなく、パートナーシップが大事だ」と語り、久遠チョコレート(愛知県豊橋市)の夏目浩次代表は「広く、高い視野で情報をみてほしい」と助言した。

学生には経営トップに質問できる貴重な場であり、中小企業には優秀な人材獲得の機会になった。

他社の社長も同時参加する企画を実現できるフットワークの良さも中小企業らしさだ。苦境でも社会貢献を考え行動することで評価が高まり、中小企業のSDGsに磨きがかかる。

日刊工業新聞2020年5月15日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

災害時、被災地に提供した救援物質が余ることありますね。できるだけミスマッチを防ぎ、必要とされている支援をしたいです。普段から社会貢献をして人脈を持っていると、スムーズな支援ができると思います。あと「できない理由」を並べず、とりあえず行動することも大切そうです。15日「SDGs面」から。

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