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“目に見えない”情報を映像化、富士フイルムが分光カメラを投入へ

富士フイルムは、2022年度までをめどに、任意の波長帯の光を複数同時に捉えられるマルチスペクトルカメラシステムを市場投入する。人間の目では捉えられない情報を映像化でき、産業用ロボットや飛行ロボット(ドローン)などと組み合わせることで作業効率化や品質管理などに役立つ。画像処理システム市場は人手不足や工場自動化の拡大などで増加傾向にあり、独自技術を生かした製品で需要獲得を狙う。

スペクトルカメラは分光カメラとも呼ばれ、デジタルカメラのようなRGBカメラでは撮影できない光の波長を捉えられる。富士フイルムが同システムを手がけるのは初めて。19年からレンズやアプリケーション(応用ソフト)などの開発に取り組んでいる。

レンズに内蔵する光学フィルターで捉えられる波長が決まる。例えば植物の生育状況を調べたい場合、700ナノメートル(ナノは10億分の1)付近の波長の光に狙いを絞ることで葉緑素の活性化状況を“見える化”できる。撮影できる波長の範囲はフィルターを変えることで変更できる。

波長の範囲が異なる複数の映像を同時に取得でき、データの比較や分析の手間を減らせる。独自の画像処理技術や偏光イメージセンサーも使用することで映像の鮮明度を高めて他社と差別化する。

幅広い業種でのシステム活用を狙う。植物に注目した利用では、スマート農業のほか、枕木の老朽化具合を調べるインフラ点検での活用も想定する。製造現場では、透明フィルムに付いた傷を確認するといった目視では難しい品質管理に導入することで生産性の向上が期待できる。省人化や自動化は業種の垣根を越えた共通の課題だ。現場で活躍するロボットの視覚を支える機器や画像処理アプリの引き合いは強い。

富士経済(東京都中央区)は、画像処理システムの世界市場について22年には1兆5024億円(18年比10・9%増)まで拡大すると予測している。

日刊工業新聞2020年5月12日

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