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事業がフィルムに留まらないけど、社名変えないのですか?富士フイルムHD社長の答え

富士フイルムホールディングス社長・助野健児氏インタビュー

―2020年度は新たな中期経営計画が始まります。
「19年は『収益力を向上する製品群』『成長を加速する製品群』『将来の核となる製品群を作るための投資』に経営資源を傾斜配分した。トレンドがどう変わるか、何をしないといけないかを明確にし、次の中期経営計画を策定する。将来の核になる事業、我々の技術やノウハウを生かせる分野において、早く事業拡大するためのピースがあれば、M&A(合併・買収)についても考える価値はある。特にヘルスケア分野は伸びるポテンシャルがある」

―人工知能(AI)を用いた開発を進めています。
「画像診断などの支援システム『レイリ』、インフラ画像診断サービス『ひびみっけ』、画像解析によるアルバム自動作成といった事例は出ている。さらに商品も出していく。将来のAI技術者育成にも取り組んでいる」

―デジタルカメラ事業の見通しは。
「スマートフォンで手軽に写真が撮れるようになった点では厳しい。ただミラーレス市場は伸びており、『良い写真を撮りたい』というニーズは高まっている。高画素など差別化した製品を出していけば、まだまだ売ることができる。写真事業を総合的に手がけているのは当社のみであり、写真の楽しみ方を伝えるのは使命だ」

富士フイルムホールディングス社長・助野健児氏

―ヘルスケア事業で19年度見込みで5200億円の売上高を、20年代半ばに1兆円にする目標を掲げました。
「売上高の3割をヘルスケア事業が占めるようになる。営業利益率を早く10%以上にしたい。診断分野では日立製作所の画像診断関連事業を買収したことで、製品ラインアップが整った。治療分野で我々の強みを生かせるのは開発・製造受託(CDMO)とリポソームであり、積極的に投資している」

―事業が“フィルム”に留まらなくなっています。社名変更は検討しないのですか。
「“富士フイルム”がブランドとなっている。ただ海外では、当社が再生医療やCDMOをやっていることがあまり知られていない。ブランドは変えず、会社の内容をアピールしたい」

【記者の目/“3兆円企業”実現へ布石】

19年後半は富士ゼロックスの完全子会社化、日立製作所からの画像診断関連事業の買収と、大型案件が相次いだ。20年は米国の新たな半導体材料生産拠点が稼働予定。収益力向上によるドキュメント事業の成長も見込む。変化を作り出す“3兆円企業”の実現に向けた布石を打つ1年になりそうだ。

(江上佑美子)

日刊工業新聞2020年1月1日

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