統合を半年延期した日本触媒と三洋化成、有数の機能性化学品メーカー誕生への壁

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五嶋日本触媒社長(左)と安藤三洋化成社長(19年5月)

日本触媒と三洋化成工業は、10月に予定していた経営統合を2021年4月に延期した。日触は2月に20年3月期連結業績予想を大幅に下方修正。加えて新型コロナウイルス感染拡大で「事業環境が大きく変化した」(三洋化成の安藤孝夫社長)ため、当初三洋化成1に対し日触1・225で合意した統合比率を見直す。日本の化学業界で久々の大型再編だけに、両経営陣には時機を逸しない決断力と、強い求心力を持ったかじ取りが求められる。

日触の五嶋祐治朗社長と安藤社長が「半年(の延期)で何が何でもやりきる」と口をそろえる経営統合までのシナリオはこうだ。両社は8日の決算発表で21年3月期の見通しは公表を控えた。

その後出そろう両社の業績見通しや9月30日時点の株価などを参考にして、株式移転比率を決定。12月の取締役会を経て21年1月開催予定の臨時株主総会で決議し、同年4月1日に統合持ち株会社「シンフォミクス」が誕生する。

ただ、大型再編に伴う統合比率の交渉は、極めて繊細な問題になるケースが多い。03年に三井化学と住友化学工業(現住友化学)が、統合比率で合意できず、統合を見送った。実現していたら、現在の化学業界の構図は大きく変わっていた。10年には当時の食品業界1位のキリンホールディングスと2位のサントリーホールディングスが経営統合を模索したが、統合比率で折り合えず、巨大再編はたち消えた。

今回の日触と三洋化成はどうか。SBI証券の沢砥正美シニアアナリストは「両社の統合は、次世代リチウムイオン電池の事業化や中期的な高付加価値品の拡大が主目的とみる。半年の延期はこの中期的な事業戦略に大きな影響はない。破談の可能性は低い」と前向きに見る。

歴史や文化が異なる企業が統合する難しさについて、五嶋社長は「本来の目的や危機感がその時にあるかどうか。目的は共有できても、それを達成するために(異なる文化を受け入れるなど)相当な犠牲を払うこともある。今回の統合はそれも含め可能だ」とする。

一方の安藤社長は「自社だけでなく、新しい会社にとって何が良いかを考えればうまくいく。短期的な売り上げ、利益を見ては駄目」と、中長期目線で成長を志向する考えに相違はない。

最大のハードルは新型コロナで不透明感が漂う中、統合比率を決定し、ステークホルダーの賛同を得ることだ。統合は「高吸水性樹脂(SAP)のコスト競争力強化に加え、両社の高付加価値な機能性化学品の事業ポートフォリオ拡大や新製品開発の加速など、メリットが大きい」(沢砥シニアアナリスト)と評価するように、中長期のシナジー効果を株主に訴え、理解を得ないことには統合は実現しない。

統合延期が各従業員に与えた影響も大きい。五嶋社長は「(三洋化成とは)家族と同じくらいの信頼関係をもって接していることを、ことあるごとに社員に発信したい」と丁寧な説明を心がける。

コロナ禍で、一から算定してステークホルダーの賛同を得るには相当の労力がいる。交渉の長期化は混乱を招きかねず、シナジーの最大化にも影響しかねない。国際競争力のある国内有数の機能性化学品メーカーの誕生は、両トップの決断力にかかっている。

(取材=京都・大原佑美子)
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日刊工業新聞2020年5月8日

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