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原料から中間体まで、化学業界が総力で治療薬「アビガン」増産をサポート

原料から中間体まで、化学業界が総力で治療薬「アビガン」増産をサポート

抗インフルエンザ薬「アビガン」(富士フイルム提供)

新型コロナウイルス感染症の治療薬として効果が期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」で化学メーカー各社が原料や中間体、原薬の供給体制を整えている。

JNCは中間体を水俣製造所(熊本県水俣市)内のプラントで4月末から製造し、供給する。富士フイルムからの製造協力要請に対応した。デンカは原料となるマロン酸ジエチルの生産を、青海工場(新潟県糸魚川市)で5月に再開。宇部興産は宇部ケミカル工場(山口県宇部市)内で、中間体の製造と供給を始める。カネカは原薬の製造体制を整え、7月に供給を始める。シミックホールディングスは新型コロナ患者を対象とした臨床試験や製造を支援する。

アビガンは富士フイルム子会社の富士フイルム富山化学(東京都中央区)が開発。原薬は富士フイルム富山化学や富士化学工業(富山県上市町)が生産している。富士化学工業の郷柿沢工場で生産した原薬を富士フイルム富山化学に供給して製剤している。

茂木敏充外相は28日の会見で、「アビガン」をインドネシアやフィリピン、サウジアラビアなど38カ国に供与することを明らかにした。国連プロジェクト・サービス機関を通じて、大型連休前後に輸送を開始できるよう調整を進めている。70カ国から外交ルートを通じて要請があったという。

茂木外相は「治療薬の開発はきわめて重要。開発の官民の取り組み強化と国際協力を一層進めていきたい」と話す。外務省は、国際的な臨床研究を行うため、合計100万ドル(約1億円)の緊急無償資金協力を実施する。オールジャパンの体制で期待の治療薬で世界に貢献していく。

日刊工業新聞2020年4月29日の記事を加筆

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