京セラが新事業創出に拍車をかける!過去最大規模の組織再編へ
京セラがイノベーション創出の取り組みを加速している。自動車部品や半導体関連部品など既存事業の寿命に危機感を感じ、部品からデバイス、システムまで一括して提供するソリューション事業を強化するためだ。2020年度中には過去最大規模の組織再編に踏み切る。全社横断的なプロジェクトを含め、あらゆるアプローチで新事業創出に拍車をかける。(京都・大原佑美子)
19年に社内募集を始めた「新規事業アイデアスタートアッププログラム」。計800以上の応募が寄せられた。3案に絞り込んで課題や経営計画を再考し、早期事業化を目指す。狙いは「ボトムアップ経営」(谷本秀夫社長)の浸透だ。従来型ビジネスにとらわれず、社員が日頃考えていることや取り組みたいテーマなどを募り、外部の専門家や社長など役員審査を経て、商用化するのが目標だ。
谷本社長は「世の中の課題を解決しようというアイデアが多かった。従来の京セラとは全く畑違いのものもある」と期待する。
京セラは情報通信、自動車、環境・エネルギー、医療・ヘルスケアの注力事業を中心に多角化経営を得意とするが、弱みのソリューション事業を強化する上でベンチャーの技術も積極的に活用する。
オープンイノベーション創出のため新設した「みなとみらいリサーチセンター」(横浜市)は5月で稼働1年を迎える。一般も利用できる試作品工作室や技術発表・討論会を行うホールなどを備え、企業や行政機関などとのイノベーションが生まれる空間として多くの来訪者が利用する。
宅配業者の再配達削減と住民の利便性向上を狙った「IoT宅配システム」や脈波形状の変化から糖代謝状態を推定する機器「糖質ダイエットモニタ」など複数の成果を生んだ。執行役員の工藤宏哉研究開発本部副本部長は同センターから「1000億円規模の新事業を創造する」と意気込む。
経済産業省と大企業経営者をメンバーとした「イノベーション100委員会」がまとめた「日本企業における価値創造マネジメントに関する行動指針」によると「組織変革を行うには経営層同士、経営層とミドル、ミドルと現場など組織内で重層的に対話し、顧客、投資家、スタートアップ等の外部関係者との協創も必要不可欠」としている。
こうした流れを受け、京セラは20年度にファインセラミックや自動車部品など製品を軸にした16のプロダクトラインを再編し、技術や市場動向からシナジーが見込める3―4ラインごとに大くくりする。事業部門間の交流を増やし、イノベーション創出を狙う。社風や文化にとらわれず、新機軸を持続的に打ち出していく考えだ。