ロボットにも「サブスク」の波!カフェや病院で手軽に導入、ブームなるか?

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外食産業向けの食器洗浄ロボット。AI活用で大中小の食器を判別できる

外食をはじめとするサービス業や病院、介護施設などで、省人化や効率化のためロボットを導入する例が増えている。サービス業分野はロボット導入時の負担額の大きいことが、普及のネックとされてきた。自動車メーカーや電機メーカー、半導体メーカーと違って、サービス業は中小企業が多く、1台数百万―1000万円以上のロボットを導入するには人的にも資金的にもハードルが高い。ただ最近はレンタルの普及で、この構図が変わりつつある。

メンテ・機種更新込み

低料金で外食店に普及促す

たこ焼きロボットやソフトクリーム提供ロボットなど、外食産業向けの省人化ロボットを幅広く開発しているコネクテッドロボティクス(東京都小金井市)。同社が現在、注力しているのが定額料金プランだ。月30万円の料金で客先にロボシステムを据え付け、その後のメンテナンスや、新機種ロボットが登場した場合の更新などをパッケージで請け負う。

外食店スタッフはアルバイトや外国人が多く、ロボット操作に慣れていない。操作ミスでロボットが停止してしまう可能性も十分ある。また人工知能(AI)や画像処理カメラの技術が進歩し、商品購入後さらに安価で高性能な新機種が登場することもある。

定額料金プランは、そのどちらの悩みも解決できる。佐藤泰樹取締役最高執行責任者(COO)は「新型コロナウイルスの影響で外食産業の大半は投資凍結状態にある。しかし、省人化・省力化の悩みは変わらない。環境さえ落ち着けばまた投資を再開したい会社は多い。そうした企業へ売り込みたい」と意欲を見せる。

キュービットロボティクス(東京都千代田区)も、定額料金プランの導入を模索する。これまでは客先ごとに売り切りスタイルでカフェロボットシステムを製作し、納入してきたが「投資負担を抑えるため、最近はレンタルやリースプランの問い合わせが増えている」と中野浩也社長は話す。

キュービットロボティクスは居酒屋向けにビール注ぎロボットを展開する

病院や介護現場で活躍

感染症対策にも一役

病院や介護施設でも、定額料金のロボットサービスプランが注目され始めた。新型コロナの感染拡大で、院内感染防止に向けた消毒殺菌や遠隔診療システムの需要が増加。ただ、病院の多くは経営状態が良好とはいえず、数百万円もする高価なロボットを新たに導入する余裕はない。院内感染が発生すれば、患者が遠のき、病院閉鎖に追い込まれる可能性も十分にある。対応は喫緊の課題だ。

シャンティ(東京都目黒区)やZMP(同文京区)、Enkac(同千代田区)は、こうした病院向けにレンタルプランでロボットを売り込む。シャンティのロボットは来院者が訪れるドアの外に設置。「発熱や咳、だるさなどの症状はありますか?」といった簡単な問いかけを行い、新型コロナ感染の可能性がある患者とそうでない一般患者に“入室前のチェック”を行う。これまで同社のロボットは白内障手術をする患者の説明用に使われていたが、新型コロナ感染者をチェックする需要の急増を受けて専用プランを発売した。

ZMPのロボットは元々、警備向け。ビル内であらかじめ設定したルートを、障害物を避けたり一時停止したりして安全に自動走行する。このロボットにオプションで電動噴霧器による消毒液散布機能を搭載した。本体の月額料金10万円プラス1万円(消費税抜き)で利用できる。

Enkacの遠隔サービスロボットは人手不足に悩むホテルの受け付けや観光施設での案内用途を想定していたが、病院などの問い合わせが多かったことで、レンタルプランを検討。このほか、サイバーダインやアシストモーション(長野県上田市)のように、歩行などのリハビリ訓練向けにロボットのレンタルプランを考える企業も多い。

清掃ロボット分野にも手軽な定額レンタルサービスプランの導入が進む。ソフトバンクロボティクスは2019年5月にAI搭載の清掃ロボット「ウィズ」のレンタル販売を始めた。当初は1年、3年、5年などの期間設定型だったが、同年11月からこの「縛り」をなくした新プランを導入。オフィスビルやテナントビルに普及させる構えだ。

KEYWORD RaaS

従来のようにロボットやロボットシステムを売り切り形態で販売するのではなく、メンテナンスやソフトのアップデートを、インターネット上のサーバーからサービスとして提供する運用形態。ロボット利用者はシステムを立ち上げる際の負担が減り、従業員のトレーニングにかかる負担も抑えられる。資金面から大規模な設備投資ができない中小事業者にとっては、追い風となる。
 サービス事業者は資金負担の体力に加えて、ロボットの操作にも不慣れなケースが多い。RaaSは初期投資負担を抑えられるほか、毎月定額の料金で経費を計上できる。

DATA サービスロボ/35年に5兆円市場

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「2035年に向けたロボット産業の将来市場予測」は、製造分野向けロボットが35年に20年比2.1倍の2兆7294億円に伸びると見ているのに対し、サービス分野向けロボットは同4.8倍の4兆9568億円に拡大すると予測する。伸び率が大きいだけでなく、市場規模自体もサービス向けが製造向けを上回って主役市場に育つと分析している。

サービスロボット市場の内訳はオフィスや店舗、医療、介護、農業向けなどとさまざまだ。深刻化する人手不足や人件費高騰を背景に、ロボットの魅力が相対的に高まっていることが普及を後押しする。富士経済(東京都中央区)も、業務・サービスロボットの世界市場が25年に18年比2.6倍の4兆5464億円に育つとの予測をまとめている。

「ロボットは決められた作業を続けるのは得意だが、応用が利かない」「多品種変量生産の現場にロボットは不向きだ」などと言われて久しいが、最近はAIや画像処理装置、各種センサー技術の進歩で弱点が克服されつつある。さらに新型コロナの感染拡大で、省人化や作業の効率化以外に新たに「食品の無菌衛生や感染の防止」といった要素が加わったことも普及の追い風になりそうだ。ロボットメーカーやシステムインテグレーター(SIer)は、こうした新需要や技術の進歩をとらえて新商品を開発する努力が求められる。


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日刊工業新聞2020年5月5日

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