【新型コロナ】アマゾンとアリババ、非対面ビジネスで日本市場に攻勢

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アマゾンジャパンが始めた「置き配」は新型コロナ感染拡大で需要が伸びている

米中の大手IT企業が日本で、新型コロナウイルス感染拡大に対応したビジネス展開を図っている。米アマゾン・ドット・コムの日本法人アマゾンジャパンは受注増への体制整備と同時に、非対面で荷物を届ける「置き配」などを増やした。中国のアリババは、企業や学校向けのコミュニケーションツール「DingTalk(ディントーク)」の新サービスを日本で始めた。両社の責任者にそうした展開の狙いや今後について聞いた。(アリババは書面回答)

アマゾンジャパン社長のジャスパー・チャン氏 ネット通販増 「置き配」好調

―新型コロナ感染拡大の影響でネット通販が好調と聞きます。実際はいかがですか。
 「オンラインで買い物をする顧客の増加とともに、特に生活必需品や衛生用品の需要が高まっている。需要増に応えるために、在庫の確保や配送体制の強化に注力している」

―ネット通販の注文が急増し、物流は逼迫(ひっぱく)していませんか。
 「販売事業者や取引先企業などと協力し、すべての顧客に注文品配達ができるよう配送能力の拡充をしている。3月末には30都道府県で『置き配』サービスを標準化した。このサービスは商品を玄関や車庫などに届けることで、顧客が配送ドライバーと対面せずに商品を受け取れる配送方法。元々需要は高かったが、新型コロナ感染拡大が(接触感染防止の観点から)需要増に影響している可能性はある」

アマゾンジャパン社長のジャスパー・チャン氏

―4月半ばからは、生活必需品や衛生用品の優先的な入出荷措置を始めました。
 「一時的に直販商品の入荷・配達で、そうした措置を取っている。これにより、該当商品のより迅速な納品、在庫確保、配送が可能になる」

―アマゾンサイトに出品している中小企業への影響が懸念されています。
 「(外部事業者がアマゾンサイトで販売する)『マーケットプレイス』の商品入荷は制限しておらず、販売事業者にはほとんど影響がない。アマゾンに出品している販売事業者のほとんどが中小企業で、その数は15万社以上。日本の中小企業の販売事業者の2018年の流通総額は、9000億円超にも上る。アマゾンサイトを活用すれば、ローコストで販路を拡大できるメリットがある」

―需要拡大に伴い、雇用の増員も検討していますか。
 「具体的な数は言えないが、物流拠点で働く人材を増員していく。目黒の本社オフィスに勤務する人材についても、既に7000人雇用しているところ、さらに1000人採用する計画がある。特にエンジニアや商品開発に携わるプログラマーを中心に採用する」

アマゾンジャパンの物流倉庫で活躍するロボット。新型コロナの影響で荷動きは増加している

―新型コロナ感染の収束後の中長期では、日本のネット通販事業をどのように見通しますか。
 「特に消費財やファッションのニーズが伸びるだろう。消費財分野では例えば、スーパーマーケットのライフを運営するライフコーポレーションと組み、同社の生鮮食品をアマゾンの有料会員向けサービス『プライムナウ』を通じて届けている。対象エリアは現在、2カ所だが今後拡大していきたい」(聞き手・張谷京子)

アリババ ディントーク事業部CTOのヒューゴ・ジュ氏 モバイル交流サービス

―3月上旬に日本で新しいサービスを始めました。
 「企業のテレワークを支援するため、無料のモバイルオフィスサービス『DingTalk(ディントーク)』の提供を始めた。このサービスは、テレビ会議なら300人以上、グループチャットなら1000人以上が同時に参加できる。人数が増えても、テレビ会議では低遅延、高精細な画面でやりとりできるのは当社ならではだと思う」

―日本企業で導入されていますか。
 「日本酒『獺祭』製造の旭酒造(山口県岩国市)は、ディントークを使い、1000人の従業員が自社ブランドの酒を一緒に楽しめる年次集会をオンラインで開催した。東京コスモ学園(東京都新宿区)や翰林日本語学院(横浜市青葉区)などの日本語学校は、学生への情報発信ツール用のほか、休校の代替策としてのオンライン授業でも利用している」

アリババ ディントーク事業部CTOのヒューゴ・ジュ氏

「中国では約1000万社がディントークをテレワークに使用している。新型コロナ感染の拡大ピーク時には、1億2000万人以上の学生がオンライン授業でディントークを利用した」

―テレワークが増えたことで、日本のIT企業も関連サービスの提供を加速しています。他社との差別化ポイントは何ですか。
 「中国語や日本語、英語を含む14カ国語対応の人工知能(AI)即時翻訳サービスで、異なる言語でのコミュニケーションをサポートできること。またアプリ上での決済や休暇などのモバイル申請・承認、テレワーク時のオンライン勤怠記録、複数作業者間でのオンライン・ドキュメントの同時編集など、自宅で会社と同様な働き方を実現できることだ」

―新型コロナ禍において、IT企業が果たすべき役割は何でしょう。
 「世界中の医療専門家が新型コロナ感染症対策に関する情報や経験を共有できる基盤『国際医療専門家コミュニケーション・プラットフォーム』を提供している。国境を越えて、迅速に専門的な知識を交換できるツールとして役立っていると感じる」

「またユネスコ(国連教育科学文化機関)はウェブサイトで、オンライン授業を促進するソリューションの一つとしてディントークを挙げている」

アリババのディントークは低遅延、高精細な画面でテレビ会議が可能という

―今後、日本でどのような製品を提供していきますか。
 「4月上旬から機能を絞り込んだ『ディントークライト』の無料提供を始めた。日本企業など外国企業の声を反映し、テレビ会議やライブ配信機能などに特化した。今後も日本企業の声に耳を傾け、製品開発に生かしていきたい」

―米トランプ政権による中国IT機器に関するセキュリティーでの疑念表明で、日本企業の中にも同機器使用をためらう動きがあります。
 「アリババクラウドは現在、世界で70以上のセキュリティーとコンプライアンス(法令順守)の認定を受けている。ディントークで使用している重要な情報システムは、国際的なセキュリティー規格であるISO27001、ISO27018認証を取得している。また監査法人PwCが発行したセキュリティー監査報告書(SOC2リポートタイプI)でも、セキュリティー対策が国際的な基準を満たしていること示している。疑念を抱かれるような事実はない」(聞き手・大城麻木乃)

日刊工業新聞2020年5月6日

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